とうぜん『八月の博物館』ですよ。
まあ、作中に一度も静岡という言葉は出てこないけどね!
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webほんのしるべ編集部+瀬名秀明「文系人間のための〈科学本棚〉」
2010年08月18日
静岡SFといったら
posted by 瀬名秀明 at 14:17| 読んで書く、書いて読む
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2010年07月24日
科学者がパトロンになればいい
昨日、日立技術フォーラムで司会を担当してきた。
司会に徹したので、壇上で自分の意見を述べることは控えたが、パトロンの話が出たので自分の考えをここに書いておく。
ルネサンス期には貴族がアーティストのパトロンになって、よい作品を書かせていたという話題提供があった。「現代の科学技術に対して誰がパトロンになるのか」という、科学者側からの投げかけと受け止めたが、問題提起をした大隅典子教授の心には、おそらくサイエンスコミュニケーターの雇用問題なども含まれていたのではないかと推測する。なぜならこのフォーラムのスライドをつくっていたと思われる時期に、大隅教授は「そういう多様なアウトリーチ活動を行うには、科学者だけでなく、多様なスキルや経験を有する方々との協力が必要であり、繰り返しますが、そういう人材のためのポストが望まれます。」などとブログで書いているから。
フォーラムで「今後、パトロンのあり方も変わるのでは」とこちらから話を振ってみたところ、「お金持ちだけではなくて、小口でも市民が参加できるような寄附で行う研究があってもいいのでは」(大隅教授のブログより転載)とのお話をいただいた。
私はむしろ、科学者自身がみんなで私費を出し合って、科学研究やアウトリーチ活動のパトロンになればいいのに、と以前から思っている。
この不況の時代、実は国公立大学の教授というのはかなり安定した高給取りの職業であって、まず滅多なことでは食いっぱぐれない。彼らが毎年1ヶ月分の給料を寄付し合って基金をつくり、そうした資産を元にサイエンスコミュニケーターの生活基盤を支えて科学アウトリーチ活動を展開するだけで、とても豊かな状況が生み出せると思う。
ルネサンスの時代から、科学者は「誰かに資金を提供してもらうこと」をずっと繰り返してきた。21世紀になって、そろそろ今度は科学者自身から資金を提供し、自分たちがお世話になっている人たちのパトロンになってもいいのではないか、とまじめに思うのだ。
自分たちの研究費を提供するのではなく、自分たちの私費を寄付するというコンセプトが、ここではとても大切。それもごくふつうの科学者が、私費を持ち寄ってみんなで日本のサイエンスコミュニケーションを豊かにするという気持ちが大切。私たち作家は、自らの生活費を削ってサイエンスコミュニケーション活動をしている。外食なんて贅沢はとてもできない、お金がもったいなくてビール一杯も飲めない、という状況の中で私は原稿を書き、寄付をしている。それと同じ生活感覚を、とまではいわないが、科学者にも共有してもらえたらなあという気持ちが以前からある。つまり双方向のホスピタリティである。
おれはすでに自腹を切ってやっているよ、あんたが知らないだけだろう、といわれるかもしれない。かつてのニュートンプレスなどさまざまな事例があるので、私も十把一絡げにいうつもりはない。そこは充分に承知した上での見解である。
ただ、私たちは自分の懐が痛む行為を避けがちではあるが、本当のサイエンスコミュニケーションを考えるなら、こうした勇気ある科学者の行動がいまは大切なのではないかと思うのである。
司会に徹したので、壇上で自分の意見を述べることは控えたが、パトロンの話が出たので自分の考えをここに書いておく。
ルネサンス期には貴族がアーティストのパトロンになって、よい作品を書かせていたという話題提供があった。「現代の科学技術に対して誰がパトロンになるのか」という、科学者側からの投げかけと受け止めたが、問題提起をした大隅典子教授の心には、おそらくサイエンスコミュニケーターの雇用問題なども含まれていたのではないかと推測する。なぜならこのフォーラムのスライドをつくっていたと思われる時期に、大隅教授は「そういう多様なアウトリーチ活動を行うには、科学者だけでなく、多様なスキルや経験を有する方々との協力が必要であり、繰り返しますが、そういう人材のためのポストが望まれます。」などとブログで書いているから。
フォーラムで「今後、パトロンのあり方も変わるのでは」とこちらから話を振ってみたところ、「お金持ちだけではなくて、小口でも市民が参加できるような寄附で行う研究があってもいいのでは」(大隅教授のブログより転載)とのお話をいただいた。
私はむしろ、科学者自身がみんなで私費を出し合って、科学研究やアウトリーチ活動のパトロンになればいいのに、と以前から思っている。
この不況の時代、実は国公立大学の教授というのはかなり安定した高給取りの職業であって、まず滅多なことでは食いっぱぐれない。彼らが毎年1ヶ月分の給料を寄付し合って基金をつくり、そうした資産を元にサイエンスコミュニケーターの生活基盤を支えて科学アウトリーチ活動を展開するだけで、とても豊かな状況が生み出せると思う。
ルネサンスの時代から、科学者は「誰かに資金を提供してもらうこと」をずっと繰り返してきた。21世紀になって、そろそろ今度は科学者自身から資金を提供し、自分たちがお世話になっている人たちのパトロンになってもいいのではないか、とまじめに思うのだ。
自分たちの研究費を提供するのではなく、自分たちの私費を寄付するというコンセプトが、ここではとても大切。それもごくふつうの科学者が、私費を持ち寄ってみんなで日本のサイエンスコミュニケーションを豊かにするという気持ちが大切。私たち作家は、自らの生活費を削ってサイエンスコミュニケーション活動をしている。外食なんて贅沢はとてもできない、お金がもったいなくてビール一杯も飲めない、という状況の中で私は原稿を書き、寄付をしている。それと同じ生活感覚を、とまではいわないが、科学者にも共有してもらえたらなあという気持ちが以前からある。つまり双方向のホスピタリティである。
おれはすでに自腹を切ってやっているよ、あんたが知らないだけだろう、といわれるかもしれない。かつてのニュートンプレスなどさまざまな事例があるので、私も十把一絡げにいうつもりはない。そこは充分に承知した上での見解である。
ただ、私たちは自分の懐が痛む行為を避けがちではあるが、本当のサイエンスコミュニケーションを考えるなら、こうした勇気ある科学者の行動がいまは大切なのではないかと思うのである。
posted by 瀬名秀明 at 10:59| 読んで書く、書いて読む
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2010年06月23日
科学の応援団になってくれというが
私はベガルタ仙台を応援するように科学を応援するつもりなどまったくないのであった。
応援とは、地元だから、とか、同郷だから、といった半ば盲目的な愛によってなされるものだ。科学をそんなふうに応援することが、本当に科学のためになるだろうか?
私は科学技術インタープリターを応援したことはある(いまも応援している)。それは彼らが東大における私の教え子だからだ。愛情を持って当然だろう。しかしなんでもかんでも科学を応援してくれといわれれば、それは違うといいたくなる。
まず科学者は、いままで自分は誰かを本気で応援したことはあるか、と己の胸に問うてみるべきだろう。自分のことは知ってもらいたい、正確に伝えてもらいたい、しかし他人のことに興味はない、というのでは、とても愛する気持ちになどならないね。
もちろん科学者全員がだめだとはまったく思わない。多くの科学者はこうしたことを充分にわかっているはずだと思う。
科学者がまずは社会や文化の応援団になればよい。その熱い気持ちを本当に見せてくれるなら、人々は自然と科学を応援するだろう。
応援とは、地元だから、とか、同郷だから、といった半ば盲目的な愛によってなされるものだ。科学をそんなふうに応援することが、本当に科学のためになるだろうか?
私は科学技術インタープリターを応援したことはある(いまも応援している)。それは彼らが東大における私の教え子だからだ。愛情を持って当然だろう。しかしなんでもかんでも科学を応援してくれといわれれば、それは違うといいたくなる。
まず科学者は、いままで自分は誰かを本気で応援したことはあるか、と己の胸に問うてみるべきだろう。自分のことは知ってもらいたい、正確に伝えてもらいたい、しかし他人のことに興味はない、というのでは、とても愛する気持ちになどならないね。
もちろん科学者全員がだめだとはまったく思わない。多くの科学者はこうしたことを充分にわかっているはずだと思う。
科学者がまずは社会や文化の応援団になればよい。その熱い気持ちを本当に見せてくれるなら、人々は自然と科学を応援するだろう。
posted by 瀬名秀明 at 21:47| 読んで書く、書いて読む
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2010年06月11日
2010年06月09日
創元SF短編賞
本日発売の雑誌「ミステリーズ!」によると、第一回創元SF短編賞の受賞者・松崎有理さんは、1972年生まれで東北大学理学部出身だそうだ。
posted by 瀬名秀明 at 15:33| 読んで書く、書いて読む
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2010年05月25日
2010年05月02日
巻末解説
文庫巻末解説を書くときの本当のコツは、書きすぎないことだとここ十年でわかってきた。
読者は自分がいちばんこの作家を知っていると思いたがるものだ。そこで何もかも解説されていると、むっとしてその解説者を貶したくなるらしい。あえて解説者が触れなかったことをブログに書いてみたりする。そうした心理をうまくサポートしてあげるのが、現代ではよい解説者なのかもしれない。
あるいは、仲間意識を刺激する方法もある。私たちはこの本が好きな仲間だよ、と語りかけることは、なるほど一時の売り上げや、あるいはコミュニティの幸福感につながるようだ。自分の仲間でない人間が長々と解説を書いているのを見ると不審に感じるような読者も今後は増えてくるだろう。
しっかり解説を書こうとすればするほど、読者は離れてゆくとここ数年で感じるようになった。これは憶測だが、現代においていわゆるしっかりした解説はその読者にもひとりの人間であることを無言のうちに強要させてしまうからではないか。こちらにそのつもりがなくても読者はそうした窮屈を感じているのではないか。そうだとすれば、そろそろ文庫解説を書く仕事は自分の中で終わりに近づいているような気がしている。
私は読書のときくらい仲間から離れてひとりで本に向き合いたいと思う人間である。まっさらな気持ちでいつも本を読みたい。そしてまっさらな気持ちで作家や作品を分析し、巻末解説を書きたいと思っているが、そうした解説者は現代では求められていないのかもしれない。私のような読者は驚くほど少数派なのだということが、ここ数年で身に沁みてわかってきた。私はひとりになって本を読むが、多くの人はひとりになりたくないから本を読むのだと、遅まきながら作家をやって初めて気づいた。
文庫に解説がついている日本の文化って、とてもすてきだと思うのだ。それによって確実に日本の読者は、よりエンターテインメントを楽しめていると思う。でも、そうした文化は、もう流行らないのかもしれない。私は古い人間になった。
読者は自分がいちばんこの作家を知っていると思いたがるものだ。そこで何もかも解説されていると、むっとしてその解説者を貶したくなるらしい。あえて解説者が触れなかったことをブログに書いてみたりする。そうした心理をうまくサポートしてあげるのが、現代ではよい解説者なのかもしれない。
あるいは、仲間意識を刺激する方法もある。私たちはこの本が好きな仲間だよ、と語りかけることは、なるほど一時の売り上げや、あるいはコミュニティの幸福感につながるようだ。自分の仲間でない人間が長々と解説を書いているのを見ると不審に感じるような読者も今後は増えてくるだろう。
しっかり解説を書こうとすればするほど、読者は離れてゆくとここ数年で感じるようになった。これは憶測だが、現代においていわゆるしっかりした解説はその読者にもひとりの人間であることを無言のうちに強要させてしまうからではないか。こちらにそのつもりがなくても読者はそうした窮屈を感じているのではないか。そうだとすれば、そろそろ文庫解説を書く仕事は自分の中で終わりに近づいているような気がしている。
私は読書のときくらい仲間から離れてひとりで本に向き合いたいと思う人間である。まっさらな気持ちでいつも本を読みたい。そしてまっさらな気持ちで作家や作品を分析し、巻末解説を書きたいと思っているが、そうした解説者は現代では求められていないのかもしれない。私のような読者は驚くほど少数派なのだということが、ここ数年で身に沁みてわかってきた。私はひとりになって本を読むが、多くの人はひとりになりたくないから本を読むのだと、遅まきながら作家をやって初めて気づいた。
文庫に解説がついている日本の文化って、とてもすてきだと思うのだ。それによって確実に日本の読者は、よりエンターテインメントを楽しめていると思う。でも、そうした文化は、もう流行らないのかもしれない。私は古い人間になった。
posted by 瀬名秀明 at 15:57| 読んで書く、書いて読む
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2010年04月26日
バーンアウト
『インフルエンザ21世紀』が科学ジャーナリスト賞にかすりもしなかったことで、なんだか予想できなかったほどがっくりきている自分に驚いている。『インフルエンザ21世紀』はこれまでも厭なことがあったが、ついに心が折れた感じがする。サイエンスコミュニケーションに関してはいまのところ燃え尽き状態だ。
しばらくは小説一筋でがんばります。
しばらくは小説一筋でがんばります。
posted by 瀬名秀明 at 17:09| 読んで書く、書いて読む
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2010年04月11日
研究者の皆様へ、ちいさなお願い
ありがたいことに、いまも大学や研究機関、学会などから、講演のご依頼をいただくことがございます。私は2009年3月で東北大学機械系特任教授を退任しましたので、現在は完全なフリーの小説家。それでも学術の場で話ができるのは純粋に嬉しく感じています。
さて、ここでちいさな私の願いを書かせてください。
学術コミュニティと作家のコミュニティは、常識も習慣も大きく異なっています。いちばんの違いは、研究者はおおむねどこかの大学や企業に所属するサラリーマンであり、作家は自由業であるということです。不況にもっとも強い職業のひとつはパーマネントの職を得た研究者といえるでしょう。一方、作家は自分が書いた原稿がすべて。
研究者から講演のご依頼をいただくとき、必ずといっていいほどくっついてくるのが、「些少で申し訳ありませんが……」という一言。研究コミュニティでは講演でお金を儲けるという感覚はなく、講演とはコミュニケーションの場であり、アウトリーチという高邁なボランティア活動の場と認識されています。研究者は他にお給料がありますから、講演で稼ぐ必要はないし、むしろそういう雑所得は研究者として汚れた感じさえするかもしれません。
さすがに、年に何十回も「些少で申し訳ありませんが……」といわれると、ちょっと心がしおれてしまいます。これからは「些少で申し訳ありませんが……」というのはやめませんか。些少なのは研究者個人の責任ではないのですから。そのかわり、心のこもったご依頼文を送っていただけると嬉しいなあと思います。私はひとりの作家ですので、ご依頼の内容がわくわくするものなら引き受ける、そうでなければ引き受けない、という単純な判断で動きたいと思っています。
多くは知り合いの研究者からの一報で、講演のご依頼が始まります。しかしこちらがいったん承諾すると、「あとは事務から連絡が行きますから」といって任せっぱなし。「事前に要旨を提出してください」(しかもA4版の分量!)、「スライドを事前提出してください」、「ハンドアウトの作成を」、「講演録に赤字を入れてください」、「ウェブサイトに掲載します」……。どんどん要求がエスカレートしていきます。その他、「ご自宅から会場までの全交通機関と料金を規定の用紙に記入して提出してください」……秘書業務に特化された用紙を、一般個人が埋めるのはとても大変なのですよ。そこをわかっていただけないでしょうか。
もちろん、こういった手続きも、講演することが楽しい、おもしろいと思うなら喜んでこなしますが、要旨や講演録などといった仕事はほとんどルーチンのもので、そこに血が通っていないことも多いようです。どうか研究者の皆様、なぜここで要旨が必要なのか、少し立ち止まって考えてみませんか? その要旨はたんにレイアウトを埋めるためだけのものではありませんか? 学術発表なら要旨を文章で掲載することに業績としての意味もあります。しかし作家は文章を書いてお金を稼ぐ職業です。実をいうと要旨のような文章を書くことは、作家業にとって本当に苦痛な作業なのです。
(むろん、講演については別の習慣もあります。「アテンドはどちらの出版社が?」……いいえ、ひとりで参ります。「同伴者のお席はいくつ用意しましょうか?」……大丈夫です。お気遣いありがとうございます。「お嫌いな食べ物は?」……打ち合わせにかかる飲食費は自己負担しますのでご心配なく。もし予算に組み込まれてしまっているなら、かわりにお菓子などの手土産を持参しますので、みなさまで後でお楽しみください)
私は数年前から、講演のご依頼をいただいた際、講演に附属するいっさいの事務仕事についても同時にうかがうようにしています。最初に明示されなかった仕事については、申し訳ありませんが辞退しています。私たちはロボットではなくて人間ですから、意味もない仕事でお互いを縛りつけたくないですよね。
要旨を書くことが当然だ、スライドを使うことが当然だと、いままで思っていらっしゃったとしたら、いったん研究施設の外へ出て、大きく深呼吸をして、世の中には違う価値観や考え方、常識があるのだということを思い出してみてください。
いや、私は研究者の立場であなたを招聘しているのだよ、こちらのテリトリーに入ってもらう以上、あなたもこちらの常識でふるまってほしい、と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり申し訳ありません、そういった講演会は辞退させてください。
研究コミュニティにはいろいろふしぎな習慣がありますよね。たとえば、多くの研究者は、「本はただで贈られてきてあたりまえ」と思っているようです。私たち作家は、その本の代金を自分で支払って皆様にお送りしています。押しつけがましい気持ちでいっているのではなく、私たちは純粋に感謝の気持ちを込めて皆様に本を贈っています。でも、決して「ただなのがあたりまえ」ではないことを、ちょっとだけ知っておいていただけたらと思います。
講演を依頼する、依頼を受ける、これもちいさな科学コミュニケーションだと私は感じています。そんなの面倒くさい? そのときは研究者の皆様同士で講演会をおつくりください。そのほうがずっと気楽で、ひとつひとつの習慣に疑問を感じることなく進行できます。一作家としての私の役割は、そうしたものとは違う想いを、みなさまと会場でつくることだと考えています。
【追記】
何か私が講演にかかる事務手続きの煩雑さをぼやいたように一部で受け取られているようですが、そういう主旨ではありません。
研究者たちが何も考えず、ただそういうレイアウトだからという理由で要旨などを要求してくる、定型句のように「些少で申し訳ありませんが」といってくる、自分たちの社会常識で相手も対応すると信じ切っている、その自動化された研究コミュニティのあり方が、ひとりの作家としてはやりきれないのです(研究者全員がそうだとはいっていませんよ。そういうケースが無視できない程度には存在するということです)。せめて作家に対する講演依頼のときには、ロボットではなく人間として行動してほしい。自分とは別の考え方、常識があるのだということに気づいてほしい(そうでなければコミュニティ外の人間に講演の依頼なんていっそしないでほしい)。研究者という創造的な職業なのだから、ものを考えてほしいと私は願っています。大層な話ではありません。ちいさな、しかし大切なお願いです。
さて、ここでちいさな私の願いを書かせてください。
学術コミュニティと作家のコミュニティは、常識も習慣も大きく異なっています。いちばんの違いは、研究者はおおむねどこかの大学や企業に所属するサラリーマンであり、作家は自由業であるということです。不況にもっとも強い職業のひとつはパーマネントの職を得た研究者といえるでしょう。一方、作家は自分が書いた原稿がすべて。
研究者から講演のご依頼をいただくとき、必ずといっていいほどくっついてくるのが、「些少で申し訳ありませんが……」という一言。研究コミュニティでは講演でお金を儲けるという感覚はなく、講演とはコミュニケーションの場であり、アウトリーチという高邁なボランティア活動の場と認識されています。研究者は他にお給料がありますから、講演で稼ぐ必要はないし、むしろそういう雑所得は研究者として汚れた感じさえするかもしれません。
さすがに、年に何十回も「些少で申し訳ありませんが……」といわれると、ちょっと心がしおれてしまいます。これからは「些少で申し訳ありませんが……」というのはやめませんか。些少なのは研究者個人の責任ではないのですから。そのかわり、心のこもったご依頼文を送っていただけると嬉しいなあと思います。私はひとりの作家ですので、ご依頼の内容がわくわくするものなら引き受ける、そうでなければ引き受けない、という単純な判断で動きたいと思っています。
多くは知り合いの研究者からの一報で、講演のご依頼が始まります。しかしこちらがいったん承諾すると、「あとは事務から連絡が行きますから」といって任せっぱなし。「事前に要旨を提出してください」(しかもA4版の分量!)、「スライドを事前提出してください」、「ハンドアウトの作成を」、「講演録に赤字を入れてください」、「ウェブサイトに掲載します」……。どんどん要求がエスカレートしていきます。その他、「ご自宅から会場までの全交通機関と料金を規定の用紙に記入して提出してください」……秘書業務に特化された用紙を、一般個人が埋めるのはとても大変なのですよ。そこをわかっていただけないでしょうか。
もちろん、こういった手続きも、講演することが楽しい、おもしろいと思うなら喜んでこなしますが、要旨や講演録などといった仕事はほとんどルーチンのもので、そこに血が通っていないことも多いようです。どうか研究者の皆様、なぜここで要旨が必要なのか、少し立ち止まって考えてみませんか? その要旨はたんにレイアウトを埋めるためだけのものではありませんか? 学術発表なら要旨を文章で掲載することに業績としての意味もあります。しかし作家は文章を書いてお金を稼ぐ職業です。実をいうと要旨のような文章を書くことは、作家業にとって本当に苦痛な作業なのです。
(むろん、講演については別の習慣もあります。「アテンドはどちらの出版社が?」……いいえ、ひとりで参ります。「同伴者のお席はいくつ用意しましょうか?」……大丈夫です。お気遣いありがとうございます。「お嫌いな食べ物は?」……打ち合わせにかかる飲食費は自己負担しますのでご心配なく。もし予算に組み込まれてしまっているなら、かわりにお菓子などの手土産を持参しますので、みなさまで後でお楽しみください)
私は数年前から、講演のご依頼をいただいた際、講演に附属するいっさいの事務仕事についても同時にうかがうようにしています。最初に明示されなかった仕事については、申し訳ありませんが辞退しています。私たちはロボットではなくて人間ですから、意味もない仕事でお互いを縛りつけたくないですよね。
要旨を書くことが当然だ、スライドを使うことが当然だと、いままで思っていらっしゃったとしたら、いったん研究施設の外へ出て、大きく深呼吸をして、世の中には違う価値観や考え方、常識があるのだということを思い出してみてください。
いや、私は研究者の立場であなたを招聘しているのだよ、こちらのテリトリーに入ってもらう以上、あなたもこちらの常識でふるまってほしい、と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり申し訳ありません、そういった講演会は辞退させてください。
研究コミュニティにはいろいろふしぎな習慣がありますよね。たとえば、多くの研究者は、「本はただで贈られてきてあたりまえ」と思っているようです。私たち作家は、その本の代金を自分で支払って皆様にお送りしています。押しつけがましい気持ちでいっているのではなく、私たちは純粋に感謝の気持ちを込めて皆様に本を贈っています。でも、決して「ただなのがあたりまえ」ではないことを、ちょっとだけ知っておいていただけたらと思います。
講演を依頼する、依頼を受ける、これもちいさな科学コミュニケーションだと私は感じています。そんなの面倒くさい? そのときは研究者の皆様同士で講演会をおつくりください。そのほうがずっと気楽で、ひとつひとつの習慣に疑問を感じることなく進行できます。一作家としての私の役割は、そうしたものとは違う想いを、みなさまと会場でつくることだと考えています。
【追記】
何か私が講演にかかる事務手続きの煩雑さをぼやいたように一部で受け取られているようですが、そういう主旨ではありません。
研究者たちが何も考えず、ただそういうレイアウトだからという理由で要旨などを要求してくる、定型句のように「些少で申し訳ありませんが」といってくる、自分たちの社会常識で相手も対応すると信じ切っている、その自動化された研究コミュニティのあり方が、ひとりの作家としてはやりきれないのです(研究者全員がそうだとはいっていませんよ。そういうケースが無視できない程度には存在するということです)。せめて作家に対する講演依頼のときには、ロボットではなく人間として行動してほしい。自分とは別の考え方、常識があるのだということに気づいてほしい(そうでなければコミュニティ外の人間に講演の依頼なんていっそしないでほしい)。研究者という創造的な職業なのだから、ものを考えてほしいと私は願っています。大層な話ではありません。ちいさな、しかし大切なお願いです。
posted by 瀬名秀明 at 00:00| 読んで書く、書いて読む
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2009年07月24日
皆既日食
喜界島で皆既日食を堪能してきました。
前日に現地入り。那覇の航空クラブのベテランパイロットふたりとパイパー28で飛びました。当日早朝から雨模様で、雲も低かったので、9時頃から喜界空港で待機。天気の状況によってはフライトしながら皆既の瞬間を迎えようかとも考えていましたが、けっきょく、空港前の芝生に寝転んでの観察となりました。
高い薄雲が全体にかかっていましたが、観察用メガネを使えばはっきりと欠けてゆく様子がわかります。今回はデジタル一眼レフカメラのみを持参。三脚も使いません。つまり素人の記録写真のみ。この目で見て感じるのが第一だと考えていたためです。
皆既になる直前から急速に暗くなり始め、あたりの雰囲気がぐんぐんと変化してゆくのが体感できます。
それでも地平線の向こうは仄明るく、真っ暗という感じではありません。2分あまりの皆既日食は、多くの人にとってとても短く感じられたようです。太陽が再び顔を出す瞬間、思わず声を上げていました。一気に世界が明るくなります。それでも本当はまだ暗いはずなのに、皆既と部分日食ではまったく世界が異なって感じられるのです。皆既が終わって5分後、低い雲が張り出し始め、もう太陽の全体像を観察することはできなくなりました。となりの奄美は低い雲が張り出していたと後で聞きましたので、とてもラッキーでした。
梅雨前線がどんどんやってきます。昼食を食べ、夕方になる前に喜界を離陸しました。2000フィートくらいまで暗い雨雲が降りてきて、海に波打つような白線を描き出しているのが上空から見えました。雨の接線が海に白い筋を描きながら押し寄せてきているのです。その接線を避けるようにして飛び、沖永良部島でいったん天候を確認してから那覇空港に戻りました。
後で天気図も確認しましたが、喜界島は本当にラッキーなタイミングで皆既日食をとらえることができたポイントだったようです。すばらしい体験でした。
写真1:皆既日食になる直前。急速に周囲が暗くなる。
写真2:皆既日食。
写真3:皆既日食が終わって5分後、低い雲が張り出し始める。


前日に現地入り。那覇の航空クラブのベテランパイロットふたりとパイパー28で飛びました。当日早朝から雨模様で、雲も低かったので、9時頃から喜界空港で待機。天気の状況によってはフライトしながら皆既の瞬間を迎えようかとも考えていましたが、けっきょく、空港前の芝生に寝転んでの観察となりました。
高い薄雲が全体にかかっていましたが、観察用メガネを使えばはっきりと欠けてゆく様子がわかります。今回はデジタル一眼レフカメラのみを持参。三脚も使いません。つまり素人の記録写真のみ。この目で見て感じるのが第一だと考えていたためです。
皆既になる直前から急速に暗くなり始め、あたりの雰囲気がぐんぐんと変化してゆくのが体感できます。
それでも地平線の向こうは仄明るく、真っ暗という感じではありません。2分あまりの皆既日食は、多くの人にとってとても短く感じられたようです。太陽が再び顔を出す瞬間、思わず声を上げていました。一気に世界が明るくなります。それでも本当はまだ暗いはずなのに、皆既と部分日食ではまったく世界が異なって感じられるのです。皆既が終わって5分後、低い雲が張り出し始め、もう太陽の全体像を観察することはできなくなりました。となりの奄美は低い雲が張り出していたと後で聞きましたので、とてもラッキーでした。
梅雨前線がどんどんやってきます。昼食を食べ、夕方になる前に喜界を離陸しました。2000フィートくらいまで暗い雨雲が降りてきて、海に波打つような白線を描き出しているのが上空から見えました。雨の接線が海に白い筋を描きながら押し寄せてきているのです。その接線を避けるようにして飛び、沖永良部島でいったん天候を確認してから那覇空港に戻りました。
後で天気図も確認しましたが、喜界島は本当にラッキーなタイミングで皆既日食をとらえることができたポイントだったようです。すばらしい体験でした。
写真1:皆既日食になる直前。急速に周囲が暗くなる。
写真2:皆既日食。
写真3:皆既日食が終わって5分後、低い雲が張り出し始める。
posted by 瀬名秀明 at 22:28| 読んで書く、書いて読む
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2009年05月20日
2009年05月03日
いろいろ
多発飛行機の免許を取得して帰国したら、もう仙台は葉桜でした。でも葉桜の淡い色合いもなかなか風情がありますね。
任期満了に伴い、3月末で東北大学機械系の特任教授職を退職しました。実は継続を打診されていたのですが、今後数年間は積極的に小説を書いていきたい気分なので、純粋な作家業に戻りました。「瀬名秀明がゆく!東北大学機械系」のページは更新担当者がいま不在のため放置されていますが、たぶんしばらくしたらアーカイブに収録されるのでは。
帰国してからはハイペースで仕事を続けています。
新型インフルエンザへの注目が集まっています。インフルエンザウイルスが専門である父(中部大学・鈴木康夫)は、さっそく次号の「現代化学」のために最新情報を書き下ろしたようですのでぜひご覧ください。
正確な情報をつねに得て、気持ちを冷静に保つというのは簡単にできることではありませんが、どんな新型であろうとまずは自分でできるところを普段通りにおこなうことが大事。
日本人なら、まずは厚生労働省のウェブサイトをブックマークしておいて、定期的に閲覧するのがいいでしょう。現在は「新型インフルエンザ対策関連情報」のページもあります。
ここには「個人でできる対策」という文書がしっかりアップされていますから(クリックするとPDFをダウンロードできます)、一度はこれを読んでおき、必要ならプリントアウトして手元に残しておくことをお薦めします。咳でつばを飛ばさない、マスクを使う、感染の疑いのあるときは外出を控える、どれも大切なことばかりです。
国立情報学研究所の新井紀子先生らが「Reseach Map」という新世代研究基盤を起ち上げました。ご招待いただきましたのでプロフィールページをつくってみました。研究者の世界では、講演をやるごとにいちいちプロフィールを提示する必要があるので、こういうウェブページがあると確かに便利かも。
仙台ジュンク堂LOFT店、イービーンズ店で、そろそろ「瀬名秀明書店」のリニューアルがおこなわれているはず。今年はどんな本が並んでいるか、ぜひ店頭でお確かめください。LOFT店とイービーンズ店の両方で棚を展開していますので、見比べてみてくださいね。
フライト訓練のとき自炊していたのですが、自分でつくる料理があまりにまずかったので、帰国してから料理を再開。いやー、最近の料理本は親切でわかりやすい。道具もいいのを揃えればおいしい食事ができることがわかりました。ポテトサラダとかつくっています。
任期満了に伴い、3月末で東北大学機械系の特任教授職を退職しました。実は継続を打診されていたのですが、今後数年間は積極的に小説を書いていきたい気分なので、純粋な作家業に戻りました。「瀬名秀明がゆく!東北大学機械系」のページは更新担当者がいま不在のため放置されていますが、たぶんしばらくしたらアーカイブに収録されるのでは。
帰国してからはハイペースで仕事を続けています。
新型インフルエンザへの注目が集まっています。インフルエンザウイルスが専門である父(中部大学・鈴木康夫)は、さっそく次号の「現代化学」のために最新情報を書き下ろしたようですのでぜひご覧ください。
正確な情報をつねに得て、気持ちを冷静に保つというのは簡単にできることではありませんが、どんな新型であろうとまずは自分でできるところを普段通りにおこなうことが大事。
日本人なら、まずは厚生労働省のウェブサイトをブックマークしておいて、定期的に閲覧するのがいいでしょう。現在は「新型インフルエンザ対策関連情報」のページもあります。
ここには「個人でできる対策」という文書がしっかりアップされていますから(クリックするとPDFをダウンロードできます)、一度はこれを読んでおき、必要ならプリントアウトして手元に残しておくことをお薦めします。咳でつばを飛ばさない、マスクを使う、感染の疑いのあるときは外出を控える、どれも大切なことばかりです。
国立情報学研究所の新井紀子先生らが「Reseach Map」という新世代研究基盤を起ち上げました。ご招待いただきましたのでプロフィールページをつくってみました。研究者の世界では、講演をやるごとにいちいちプロフィールを提示する必要があるので、こういうウェブページがあると確かに便利かも。
仙台ジュンク堂LOFT店、イービーンズ店で、そろそろ「瀬名秀明書店」のリニューアルがおこなわれているはず。今年はどんな本が並んでいるか、ぜひ店頭でお確かめください。LOFT店とイービーンズ店の両方で棚を展開していますので、見比べてみてくださいね。
フライト訓練のとき自炊していたのですが、自分でつくる料理があまりにまずかったので、帰国してから料理を再開。いやー、最近の料理本は親切でわかりやすい。道具もいいのを揃えればおいしい食事ができることがわかりました。ポテトサラダとかつくっています。
posted by 瀬名秀明 at 10:29| 読んで書く、書いて読む
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2009年02月11日
「オッド・トーマス」シリーズ、ついに邦訳開始!
ということで早川書房のウェブサイトにも告知が出ましたが、ディーン・クーンツの最高傑作、「オッド・トーマス」シリーズが、ついにハヤカワ文庫にて3月より刊行開始となります。
いまだにクーンツといえば『ウォッチャーズ』『戦慄のシャドウファイア』だと思っている人にこそ、ぜひ読んでいただきたいですね。
現在までこのシリーズは、Odd Thomas, Forever Odd, Brother Odd, Odd Hoursの4作が刊行され、マンガ形式の番外編In Odd We Trustも出ています。
全部で6作ほどになるというこのシリーズ、どうやらかつて未完のまま終わっていたChris Snowシリーズ(1作目だけ『何者も恐れるな』として邦訳済み)とも世界観がつながっているようで、今後の展開が楽しみでなりません。
繰り返しますがこのシリーズは正真正銘の大傑作。決して読み逃さないように!
いまだにクーンツといえば『ウォッチャーズ』『戦慄のシャドウファイア』だと思っている人にこそ、ぜひ読んでいただきたいですね。
現在までこのシリーズは、Odd Thomas, Forever Odd, Brother Odd, Odd Hoursの4作が刊行され、マンガ形式の番外編In Odd We Trustも出ています。
全部で6作ほどになるというこのシリーズ、どうやらかつて未完のまま終わっていたChris Snowシリーズ(1作目だけ『何者も恐れるな』として邦訳済み)とも世界観がつながっているようで、今後の展開が楽しみでなりません。
繰り返しますがこのシリーズは正真正銘の大傑作。決して読み逃さないように!
posted by 瀬名秀明 at 22:54| 読んで書く、書いて読む
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2009年01月31日
ご来場ありがとうございました
1月24日の特別シンポジウム、25日のトークイベントにたくさんのご来場をいただき、ありがとうございました! 特に24日のシンポジウムは、限られた予算と人員のなかで精一杯やりましたが、行き届かない面もあったと思います。しかしながら、多くの方々のご援助によって、事故もなく開催することができました。ご来場の皆様、スタッフの皆様、ご支援をいただきました皆様に心から感謝いたします。
25日のトークイベントでは、出渕裕さんも飛び入り参加。高橋良輔監督とこれまでのロボットアニメを振り返り、大いに盛り上がりました。終了後は高橋さん、出渕さんと牛タンを堪能。
25日、出渕さんは仙台の古書店「火星の庭」に行ったようです。そのときの様子が「火星の庭」のブログに掲載されていますね。
24日のシンポジウムの概要は、ロボット関係の雑誌などにレポートが掲載されることと思いますので、ぜひそちらをご覧下さい。(ウェブサイト「瀬名秀明がゆく!」は更新終了しますのでこちらでは報告記事を出しません)
そういえば話は変わりますが、こんな研究が出ていたので紹介しておきます。
「真核細胞誕生の謎を解くパラサイト・シグナルを発見」
学術研究のプレスリリースに『パラサイト・イヴ』が引用されているのは嬉しいですね。
司会・コーディネート役はこれで一休みをいただいて、しばらくは原稿執筆に邁進します。
25日のトークイベントでは、出渕裕さんも飛び入り参加。高橋良輔監督とこれまでのロボットアニメを振り返り、大いに盛り上がりました。終了後は高橋さん、出渕さんと牛タンを堪能。
25日、出渕さんは仙台の古書店「火星の庭」に行ったようです。そのときの様子が「火星の庭」のブログに掲載されていますね。
24日のシンポジウムの概要は、ロボット関係の雑誌などにレポートが掲載されることと思いますので、ぜひそちらをご覧下さい。(ウェブサイト「瀬名秀明がゆく!」は更新終了しますのでこちらでは報告記事を出しません)
そういえば話は変わりますが、こんな研究が出ていたので紹介しておきます。
「真核細胞誕生の謎を解くパラサイト・シグナルを発見」
学術研究のプレスリリースに『パラサイト・イヴ』が引用されているのは嬉しいですね。
司会・コーディネート役はこれで一休みをいただいて、しばらくは原稿執筆に邁進します。
posted by 瀬名秀明 at 12:33| 読んで書く、書いて読む
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2008年11月18日
「一般の皆様へ」研究室のスタンスを伝える 【水素水その5】
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【関連するエントリー】
→「「活性水素水」と「水素水」はまったく別のものです 【水素水その1】」
→「水素水研究の基本を理解するためのリンク集 【水素水その2】」
→「太田成男先生からの手紙 【水素水その3】」
→「水素研究会発足記念シンポジウムの内容公開 【水素水その4】」
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日本医科大学の太田成男先生から、ご自身の研究室のウェブページに「一般の皆様へ」という文章を掲載したとのご連絡をいただきました。
トップページから「一般の皆様へ」をクリックすることで誰でも閲覧できます。
→フレームなどを介さず直接読むにはこちら。
一部を以下に引用します。
また、有限責任中間法人 水素研究会および日本医科大学老人病研究所 水素分子医学研究開発拠点のウェブページでは、それぞれ水素医学に関係する学術情報のリストが掲載され始めました。今後はそれらのページの充実に期待して、拙ブログの【水素水その2】の更新は終了いたします。
→水素研究会ウェブページによる「学術論文 一覧と要約」
→日本医科大学老人病研究所 水素分子医学研究開発拠点ウェブページによるデータベース「水素分子(H2)をもちいた疾患予防と治療に関する研究論文一覧」
ウェブページが読みにくい、情報が分かりにくい、という場合は、どんどん読者が当該ページの担当者へ直接要望を出し、よりよいウェブページ作成へ向けて双方で努力してゆけばよいと思います。
いま私たちは、最新かつ的確な情報をしっかりと見極め、冷静に考え続けてゆくことが、何よりも大切なのだと感じます。
【関連するエントリー】
→「「活性水素水」と「水素水」はまったく別のものです 【水素水その1】」
→「水素水研究の基本を理解するためのリンク集 【水素水その2】」
→「太田成男先生からの手紙 【水素水その3】」
→「水素研究会発足記念シンポジウムの内容公開 【水素水その4】」
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日本医科大学の太田成男先生から、ご自身の研究室のウェブページに「一般の皆様へ」という文章を掲載したとのご連絡をいただきました。
トップページから「一般の皆様へ」をクリックすることで誰でも閲覧できます。
→フレームなどを介さず直接読むにはこちら。
一部を以下に引用します。
当研究室では、「水素分子の生体への効果」についての研究を2005年より開始しました。この研究成果は大きな社会的反響をよぶことになりました。また、私たちの研究を悪用する人たちも現れました。そこで、当研究室の立場、水素に関する正確な知識を一般の方にも広く知っていただく必要が生じました。インターネット上に公表することが、一番有効であるとの助言を各方面からいただきましたので「一般の皆さまへ」という項目をホームページに設置することにしました。
また、有限責任中間法人 水素研究会および日本医科大学老人病研究所 水素分子医学研究開発拠点のウェブページでは、それぞれ水素医学に関係する学術情報のリストが掲載され始めました。今後はそれらのページの充実に期待して、拙ブログの【水素水その2】の更新は終了いたします。
→水素研究会ウェブページによる「学術論文 一覧と要約」
→日本医科大学老人病研究所 水素分子医学研究開発拠点ウェブページによるデータベース「水素分子(H2)をもちいた疾患予防と治療に関する研究論文一覧」
ウェブページが読みにくい、情報が分かりにくい、という場合は、どんどん読者が当該ページの担当者へ直接要望を出し、よりよいウェブページ作成へ向けて双方で努力してゆけばよいと思います。
いま私たちは、最新かつ的確な情報をしっかりと見極め、冷静に考え続けてゆくことが、何よりも大切なのだと感じます。
posted by 瀬名秀明 at 14:45| 読んで書く、書いて読む
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2008年11月04日
はじめて川内萩ホールに入った
東北大学百周年記念会館の川内萩ホールにはじめて足を踏み入れる。
阿部次郎記念賞の授賞式はつつがなく。受賞者のみなさま、おめでとうございます。とても表情のすてきな高校生たちでした。帯広からひとりで電車と飛行機を乗り継いでやって来た受賞者もいました。
文学部の野家啓一教授が『デカルトの密室』を読んで下さっていたことに恐縮。でも哲学者から誉められるのはとても嬉しいぞ。なんといま講義で『デカルトの密室』をテキストに使って下さっているそうです。
阿部次郎記念賞の授賞式はつつがなく。受賞者のみなさま、おめでとうございます。とても表情のすてきな高校生たちでした。帯広からひとりで電車と飛行機を乗り継いでやって来た受賞者もいました。
文学部の野家啓一教授が『デカルトの密室』を読んで下さっていたことに恐縮。でも哲学者から誉められるのはとても嬉しいぞ。なんといま講義で『デカルトの密室』をテキストに使って下さっているそうです。
posted by 瀬名秀明 at 00:38| 読んで書く、書いて読む
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2008年10月18日
水素研究会発足記念シンポジウムの内容公開 【水素水その4】
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【関連するエントリー】
→「「活性水素水」と「水素水」はまったく別のものです 【水素水その1】」
→「水素水研究の基本を理解するためのリンク集 【水素水その2】」
→「太田成男先生からの手紙 【水素水その3】」
→「「一般の皆様へ」研究室のスタンスを伝える 【水素水その5】」
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有限責任中間法人水素研究会のウェブサイトがようやく稼働しはじめました。2008年7月29日におこなわれた発足記念シンポジウムの内容が掲載されています。
→記者発表会
→基調講演 太田成男「水素医学の現状と水素研究会の課題」
→「パネルディスカッション」
*ただし、いま公開されている文章は、瀬名が送信した校正が反映されていません。校正後の、よりわかりやすい文章に改めていただくよう、連絡します。
瀬名はパネルディスカッションに参加。水素医学研究に関してpublic relationsの充実を呼びかけています。今回のウェブ公開への道筋は、私が作家活動のなかでなしうることをなした仕事であると考えています。
パネルディスカッションに参加された研究者のおひとりが、「インターネットで公表すると発言の一部だけが一人歩きし、臨床の現場が混乱する可能性」があると判断され、発言未公開となったことは示唆的だと感じます。今後、冷静な判断による水素医学への言及、発言が増えてゆくことを、個人的にも期待しています。
【追記2008.11.11】
基調講演その他へのリンクが切れているとのことだったので修正しました。URLが変更されていたみたいです。
瀬名の校正はまだ反映されていませんね。シンポジウムの記録としてはこれでもよいのだけれど、せっかくなのでわかりやすく伝わりやすい文章に改めたものにしてほしいです。こっちで校正文を公開してしまおうかな。
上記の水素研究会のウェブサイトでは、学術論文の情報もちゃんと出ていますので、興味のある人は論文を探し出して読めると思います。その点はとてもよいと感じました。
【追記】2008.11.18
2008年11月17日に、瀬名の校正は反映されました。
【関連するエントリー】
→「「活性水素水」と「水素水」はまったく別のものです 【水素水その1】」
→「水素水研究の基本を理解するためのリンク集 【水素水その2】」
→「太田成男先生からの手紙 【水素水その3】」
→「「一般の皆様へ」研究室のスタンスを伝える 【水素水その5】」
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有限責任中間法人水素研究会のウェブサイトがようやく稼働しはじめました。2008年7月29日におこなわれた発足記念シンポジウムの内容が掲載されています。
→記者発表会
→基調講演 太田成男「水素医学の現状と水素研究会の課題」
→「パネルディスカッション」
*ただし、いま公開されている文章は、瀬名が送信した校正が反映されていません。校正後の、よりわかりやすい文章に改めていただくよう、連絡します。
瀬名はパネルディスカッションに参加。水素医学研究に関してpublic relationsの充実を呼びかけています。今回のウェブ公開への道筋は、私が作家活動のなかでなしうることをなした仕事であると考えています。
パネルディスカッションに参加された研究者のおひとりが、「インターネットで公表すると発言の一部だけが一人歩きし、臨床の現場が混乱する可能性」があると判断され、発言未公開となったことは示唆的だと感じます。今後、冷静な判断による水素医学への言及、発言が増えてゆくことを、個人的にも期待しています。
【追記2008.11.11】
基調講演その他へのリンクが切れているとのことだったので修正しました。URLが変更されていたみたいです。
瀬名の校正はまだ反映されていませんね。シンポジウムの記録としてはこれでもよいのだけれど、せっかくなのでわかりやすく伝わりやすい文章に改めたものにしてほしいです。こっちで校正文を公開してしまおうかな。
上記の水素研究会のウェブサイトでは、学術論文の情報もちゃんと出ていますので、興味のある人は論文を探し出して読めると思います。その点はとてもよいと感じました。
【追記】2008.11.18
2008年11月17日に、瀬名の校正は反映されました。
posted by 瀬名秀明 at 11:37| 読んで書く、書いて読む
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2008年09月27日
新聞の影響で品切れ大騒動 『20世紀の幽霊たち』読書にいいのか
朝日新聞が『20世紀の幽霊たち』を取り上げたところ、Amazon.co.jpなどで同書の品切れがもう一週間も続いている。2007年は、納豆ダイエットの品切れ問題があったが、それに次ぐ騒ぎだという。そんなにありがたがるほど、読書によいものなのか。
というのはこっちの記事からのパクリ。
「マンガやゲームなど1日に読む量を、まんべんなく減らしていくことです。楽して感動しようとするのではなく、運動しながら物語を楽しむ努力が必要でしょう。流行に振り回されないことが一番大事。人によって体質、生活習慣などが違うので、カリスマ書店員などのまねをすれば健康を壊して損をすると思いますよ」
自分でおもしろいと思った本が多くの人にも読まれるのは嬉しいのだが、まじめな話、一発の書評で一時的に売れても、その後が続かないとランクは急速に下がっていってしまう。いろんな人があちこちで、しかもそれぞれが緩やかにつながるように評価してゆくのがいいわけだが、そういうところまで出版社側がプロデュースできた例はほとんどないと思う。いつも勿体ないなあと感じる。
ところで最近の光トポグラフィ計測で、運動しているときにも前頭前野が賦活して脳トレになるという知見がいろいろ出てきているのだが、上のようなしょうもない文章を書いていて、運動しながら読書したとき(あるいは朗読を聞いたとき)どうなるのかってけっこうおもしろい研究テーマじゃないかと思えてきた。共感や感情移入の具合もきっと変化するんじゃないかなあ。ランニングしながら音楽を聴いているみなさん、感動度に何か変化はありますか?
posted by 瀬名秀明 at 14:38| 読んで書く、書いて読む
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2008年09月08日
広瀬図書館で聞こえた会話
仙台市天文台でのトークセッションが終わり、次の予定が来るまで近くの仙台市広瀬図書館で仕事をしていたわけだが、本棚を隔てた向こうの視聴覚コーナーから、小学生と思われる男の子ふたりの会話が聞こえてきた。
「フタバスズキリュウってさあ、卵からは生まれないんだよ」
「へえー」
「でも映画だからそういうふうにつくっているらしいよ」
きみたちはどうやってそんなディープなネタを仕入れたのですか。
日本のサイエンス・コミュニケーションは、実はすごいところまで来ているのかもしれない、と思った。
「フタバスズキリュウってさあ、卵からは生まれないんだよ」
「へえー」
「でも映画だからそういうふうにつくっているらしいよ」
きみたちはどうやってそんなディープなネタを仕入れたのですか。
日本のサイエンス・コミュニケーションは、実はすごいところまで来ているのかもしれない、と思った。
posted by 瀬名秀明 at 01:28| 読んで書く、書いて読む
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2008年08月15日
太田成男先生からの手紙 【水素水その3】
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【関連するエントリー】
→「「活性水素水」と「水素水」はまったく別のものです 【水素水その1】」
→「水素水研究の基本を理解するためのリンク集 【水素水その2】」
→「水素研究会発足記念シンポジウムの内容公開 【水素水その4】」
→「「一般の皆様へ」研究室のスタンスを伝える 【水素水その5】」
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瀬名秀明より前書き
2008.8.11のエントリーを公開した後、日本医科大学大学院・加齢医学研究科の太田成男教授から、メール添付のかたちでお手紙をいただきました。それは長文で、かなりのお時間を取っていただいたのだと思います。
水素水研究について太田成男教授のスタンスや理念がわかりやすく書かれており、私はその内容に心を動かされました。私は太田教授にメールで返信し、ぜひいただいた文書をウェブで一般公開したいと申し出ました。文書の扱いについては私に任せますとメールにあったのですが、やはり事前に確認しておきたいと感じたからです。一日経って、太田教授からご返信をいただきました。本来であれば自分のウェブページに載せてリンクしていただくのがいいのでしょうが、いまは瀬名さんのブログに載せていただければありがたく思います、とのお返事でした。
太田教授からのお手紙は、私の2008.8.11のエントリー内容で誤解していた部分の訂正と、水素水研究に対するご自身のスタンス、理念についてのものです。そして研究の現場におけるエピソードも記されています。番外編は瀬名への近況報告だとのことですが、水素水について知りたいと願う多くの人にとっても心に直接届く文章だと感じました。
私の2008.8.11のエントリーに間違いや深読みのしすぎの部分があったことに対して、読者の皆様と太田教授に心からお詫びします。2008.8.11のエントリーは太田教授に事前の連絡もせず、自分の判断だけで公開した文書でした。それでもこうして太田教授から直接の言葉をいただけたことは本当によかったと思っています。私自身、水素水研究に関して理解が大きく進みました。
以下に太田成男教授から2008年8月14日の夜にいただいた文書を再掲します。太田教授からは、「説明責任を果たすために研究室のWeb上にも今まで誤解を生じさせている事柄についての解説をのせなくてはならないと考えるようになっています。」「水素研究会(も)早急にHPを立ち上げようと思っています。」とのご連絡をいただいています。今後、太田教授や水素研究会がウェブサイトを起ち上げ、情報を発信するようになったら、この文書は移動や削除をするかもしれません。また太田教授との話し合いによって、今後必要に応じて文書を変更する場合もあります。その点はどうかあらかじめご理解いただければ幸いです。
いまはこちらに掲載いたします。水素水研究の理解と発展の一助となれば嬉しいです。
以下、太田成男教授から瀬名秀明への文書(2008.8.14)
ブログ上で読みやすくするために若干の改行や空白行を入れました。
瀬名NEWS「水素水研究の基本を理解するためのリンク集」ありがとうございます。この記事を補強する意味でのコメントをお送りしたいと思います。
日本医科大学 太田成男
この論文は慶應大学との共同研究ではなく、私の研究室から出した論文です。この論文の第一著者の大学院生のKei-ichi Fukuda(福田慶一)は慶應大学の福田恵一教授と同じ名前なので、よく間違われます。福田恵一教授は、林田さんが第一著者の論文の最終著者となっているからです。
したがって、この論文は林田氏、太田教授らの共同研究の最初の論文となります。
「マイナス水素イオン」に関するビラではなく、「マイナスイオン」についての東京都からの消費者に対する注意をうながすビラでした。また、「ビラが撒かれた」というよりは、ある会議の席で、無許可・無断で配布した人がいたというほうが正確です(「ビラが撒かれた」ということと同じことかもしれませんが……)。
本をよく読んでいただければわかると思いますが、「室田氏はもともとルルドの「奇跡の水」や九州大学・白畑教授の怪しげな「活性水素」理論に関心を持っていたようで、」という内容の記載は、その本にはないと思います。少なくとも、室田社長は、私に最初に会ったときから「活性水素とは違う」ことを強調していました。私も「『活性水素』に関連する研究をお願いする」と言われたら話も聞かず即座にお断りしたでしょう。また、私と会う以前にも、室田さんが、水素の研究をしてくれる研究者をいろいろな大学を訪ねて探しまわっていた時に、ある方から「白畑教授を紹介しましょうか?」と勧められそうです。その時「とんでもない。」と即座に断ったという武勇伝(?)も聞いています。室田さんが、はじめから水素分子に注目していたのは明らかです。
このご意見には全く同感です。同感したことを前提として、生体内の水素分子の研究の深さを示唆するために、私たちの経歴と背景を紹介します。
私は、理学部化学科を卒業しています。当時は、その理学部に生物化学科もありましたから、純粋に物理化学と有機化学と無機化学からなりたつ化学科です。そして、固体表面の触媒反応機構を主な研究テーマとする研究室で卒業研究を行ないました。この卒業研究で、私は、セシウム有機化合物表面の触媒によって、水素ガスと窒素ガスからアンモニアを合成するなどの研究を行なっています。おもな仕事は真空系の実験装置を作るガラス細工でした。
大学院は薬学系の「物理化学」の研究室に進みました。分光学と生物物理が二本柱の研究室でした。この間、東京大学医科学研究所や自治医科大学と共同研究で、蛋白質の物性の研究から医学関連とミトコンドリア研究へと入って行きます。蛋白質(蛋白質合成系のEF-TuやATP合成酵素)の構造的ゆらぎを測定するために、蛋白質を重水(D2O)に溶かし込んで、蛋白質内の水素原子(H)と重水素原子(D)が交換して行く様子を赤外線スペクトラムで追跡して、蛋白質の動的構造変化を追求するという方法を用いました。フーリエ変換赤外線分光器(FT-IR)の国内第一号の機械を使っていました。私の美しいFT-IRのスペクトルは日本本分光学会の機関誌にも紹介されたくらいです。
博士課程ではATP合成酵素の構造変化を対象としました。ATP合成酵素の逆反応はH+輸送ATPaseですから、ここでも水素(H+=プロトン)と関係あったわけです。ATP合成酵素内をH+が通りぬけるのか、H2Oと結合したH3O+(ヒドロニウムイオン)が通るのかなど、分子軌道も含めずいぶん勉強しましたね。
したがって、今から考えると水素にはずっと縁があったわけです。そして、他の生化学者や分子生物学者と比較すれば格段に物理化学の素養があるといってもいいでしょう。化学科の同級生には、水素分子の物性の専門家もいますし、分子構造を計算によって予測する専門家もいます。また、時々同窓会のようなものも開いていますので、水素に関する知識や反応性の予測など相談できる親しい人がたくさんいるわけです。フリーラジカルを測定するためのESR(電子スピン共鳴)が専門の研究者(現在は、ESR学会会長)も、となりの研究室にいましたから、ラジカル測定についてもいろいろ聞ける状況にあります。
水素分子の専門の友人と私と室田社長で話をしたことがあります。室田社長が「水素を維持する容器はどんなものがいいでしょう?」と質問すると、一秒後には「アルミニウムしかありません。」との答えが返ってきました。室田社長曰く「水素を維持する容器としてアルミパウチに到達するまでに、我々素人は1年半も費やしたのに、専門家に聞けば一秒ですか? やっぱり大学の知識はすごいなぁ」。この後、室田は自信をもってアルミ缶の製品開発に向かうことになりました。
次にNature Medicine論文の第一著者の大澤(現在の水素分子医学教授)の経歴にも簡単に触れておきましょう。彼は、工学部の化学工学科を卒業しています。流体力学や分子の拡散速度の計算、溶解論、反応論などについては、彼の友人にたいへんお世話になっています。もし、彼が化学工学科出身でなければ、この研究の本当の意味を理解できなかったでしょうし、この研究をやろうとは思わなかったでしょう。
今思うに、生体内における水素分子の研究は、化学反応や物性についてのかなりの素養と背景がある研究グループでなければ、おそらくは、なしえなかったものであると思います。生体内の水素研究は物理学に裏打ちされた知識なしには進める事はできないものです。単なる思いつきや想像で仮説をたてて研究をすすめるというような表面的なものではないことを、是非御理解いただきたいと思います。
番外編
このような私の経歴を話すと、「学部学生の時は気体分子の反応研究で、今何故、老化や病気の研究なのですか?」と必ず聞かれます。普段は面倒くさいので、「ミトコンドリア研究一筋30年」ということにしています。しかし、本当の答えは、
「私の頭の進歩と学問の進歩によって、複雑な老化や行動も分子反応で理解できるようになった。大学生当時は、溶液などの均一系での触媒反応研究が主流で固体表面(不均一系)の触媒反応は複雑な系とされていた。大学院生のころになると生体内で重要な役割をはたす単一ポリペプチド酵素が大量に精製して研究できる対象になった。さらにATP合成酵素のような複雑でエネルギーが共役する酵素も研究対象になった。さらに、オルガネラの形成が分子レベルで解明できるようになった。そして、病気や老化も分子レベルで記載できるようになった。今まで関わってきた研究テーマをただ並べると一貫性がないように思う人が多いのだが、私にとっては、複雑系を分子反応という言葉で語るというだけのことであり、一貫性という点ではあまり違和感がない。今後は、もっとも複雑な老化や認知症という現象に対して、最も単純な分子で立ち向かうことにしたい。集大成の時期に来たのかもしれない。」
ついでに、筆がすべってきたので、番外編として研究の一コマ、二コマを紹介します。
Nature Medicineの論文のFig3にはESR(電子スピン共鳴)のスペクトルが載せてあります。レフリーから細胞内のヒドロキシルラジカルの量をESRで測定しろというコメントがきました。文献を調べても、細胞内のヒドロキシルラジカルを測定したという信頼できる論文はありません。無理を要求してくるのが審査員なのだとあきらめて、なんとか対策を講じようと熟考しました。ESRの依頼測定をしてくれる会社を見つけて、そこへ培養細胞系を持ち込んで、ESRを測定することにしました。その会社では、感度をあげるように改良したESR測定機械を開発しており、試料をいれる測定容器も特別の改良型です。
第一著者の大澤くんとふたりで1日12時間、2日間休みなく働きました。昼も夜もコンビニから弁当を買ってきてもらいました(私も12時間くらいは集中して実験ができる体力があることがわかったのが成果です)。当然のことですが、普通に測定しても細胞内のヒドロキシルラジカルのシグナルは検出できません。オペレータの人は「無理ですね」という意見でした。そこで、私がオペレーターの人に、レスポンス速度からスキャン速度、積算回数までESR測定条件を細かく指示することにしました。試行錯誤して、やっと細胞内ヒドロキシルラジカルを検出し、水素分子によってそれが減少することを確定しました。その会社の人も「医科大の教授が何故こんなにESRの測定に詳しいのか」と、目を丸くしていましたね。
私たちのNature Medicineの論文を読んだある会社の研究所の方から、
「私たちの研究所でもESRを測定している。こんなにきれいな(ノイズの少ない)スペクトルがとれるはずがない。」
というクレームがつきました。
「細胞内のヒドロキシルラジカルを測定したというのは本当か?」
という疑問が呈されたわけです。そこで、
「私はレスポンス速度をさげて時間をかけて測定したのではないのですよ。レスポンス速度を早くして、スキャン速度を10倍にスピードアップして10回測定(積算)して、平均をとったものですよ。10回積算すれば、計算上ルート10分の1、つまり約3分の1にSN比(signal-noise ratio)を低くすることができます。論文にも測定条件と説明が書いてありますからよく読んでくださいね」
と返答しました。分光学の研究室に所属した経験がなければ、ESRによる細胞内ヒドロキシルラジカルの測定はなしえないことだったでしょう。
ついでに言えば、ストレスによる認知障害を水素分子が抑制するという論文(Neuropsychopharmacologyの論文)に記載されている内容は、記憶とか学習能力による動物行動ついての実験が主ですので、私たちの専門外です。しかし、論文投稿前に親しいその方面の専門家に論文を読んでもらって厳しいコメントを頂戴し、論文を書き直しています。信頼できる専門家に相談すれば、信頼できる論文にできるというのが私たちの考えです。
ちなみに、Neuropsychopharmacologyはインパクトファクター6以上で、Pharmacology&Pharmacy領域の世界で200ある学術雑誌のなかのトップ4に位置する雑誌ですので、厳しい審査を経て採択されることは明らかです。特に、私はブルー・マーキュリー社の顧問をしていることを審査員に対しても明記しているので、疑いの目をもってより厳しく審査されたはずです。
ついでに裏話をしましょう。Neuropsychopharmacologyに、投稿論文がほぼ採択されるという連絡がきました。普通ですと一安心ということなのですが、今回は違っていました。いろいろ考えるうちに不安が募るばかりなのです。ひとつひとつ実験結果とその記録を検証していくと、どう見ても問題がないはずなのですが、何となく不安が解消されません。この論文の影響が大きいことが予測されますので、万が一にも、結果が他の研究室では再現されないとなると大変です。
そこで、第一著者の大学院生にもう一度同じ実験を繰り返すことを頼みました。論文が採択されてから再試をするということは、今までに例がありません。その大学院生は不満も言わずに、素直にもう一度同じ実験を行なうことに同意してくれました。「もう一度」というのは簡単ですが、実験をやる本人からは、7週間にわたって同じ実験をしなくてはならないわけですからたいへんです。その結果、前と同じ結果がでたので、ほっとした次第です。安心したそのころに、電子版に論文が発表されました。実験は正直です。でも、水素の研究は気苦労が多い。
【関連するエントリー】
→「「活性水素水」と「水素水」はまったく別のものです 【水素水その1】」
→「水素水研究の基本を理解するためのリンク集 【水素水その2】」
→「水素研究会発足記念シンポジウムの内容公開 【水素水その4】」
→「「一般の皆様へ」研究室のスタンスを伝える 【水素水その5】」
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瀬名秀明より前書き
2008.8.11のエントリーを公開した後、日本医科大学大学院・加齢医学研究科の太田成男教授から、メール添付のかたちでお手紙をいただきました。それは長文で、かなりのお時間を取っていただいたのだと思います。
水素水研究について太田成男教授のスタンスや理念がわかりやすく書かれており、私はその内容に心を動かされました。私は太田教授にメールで返信し、ぜひいただいた文書をウェブで一般公開したいと申し出ました。文書の扱いについては私に任せますとメールにあったのですが、やはり事前に確認しておきたいと感じたからです。一日経って、太田教授からご返信をいただきました。本来であれば自分のウェブページに載せてリンクしていただくのがいいのでしょうが、いまは瀬名さんのブログに載せていただければありがたく思います、とのお返事でした。
太田教授からのお手紙は、私の2008.8.11のエントリー内容で誤解していた部分の訂正と、水素水研究に対するご自身のスタンス、理念についてのものです。そして研究の現場におけるエピソードも記されています。番外編は瀬名への近況報告だとのことですが、水素水について知りたいと願う多くの人にとっても心に直接届く文章だと感じました。
私の2008.8.11のエントリーに間違いや深読みのしすぎの部分があったことに対して、読者の皆様と太田教授に心からお詫びします。2008.8.11のエントリーは太田教授に事前の連絡もせず、自分の判断だけで公開した文書でした。それでもこうして太田教授から直接の言葉をいただけたことは本当によかったと思っています。私自身、水素水研究に関して理解が大きく進みました。
以下に太田成男教授から2008年8月14日の夜にいただいた文書を再掲します。太田教授からは、「説明責任を果たすために研究室のWeb上にも今まで誤解を生じさせている事柄についての解説をのせなくてはならないと考えるようになっています。」「水素研究会(も)早急にHPを立ち上げようと思っています。」とのご連絡をいただいています。今後、太田教授や水素研究会がウェブサイトを起ち上げ、情報を発信するようになったら、この文書は移動や削除をするかもしれません。また太田教授との話し合いによって、今後必要に応じて文書を変更する場合もあります。その点はどうかあらかじめご理解いただければ幸いです。
いまはこちらに掲載いたします。水素水研究の理解と発展の一助となれば嬉しいです。
以下、太田成男教授から瀬名秀明への文書(2008.8.14)
ブログ上で読みやすくするために若干の改行や空白行を入れました。
瀬名NEWS「水素水研究の基本を理解するためのリンク集」ありがとうございます。この記事を補強する意味でのコメントをお送りしたいと思います。
日本医科大学 太田成男
慶應義塾大学の林田健太郎氏が太田教授らと共著で発表した論文。水素ガスの抗酸化作用について、さらに結果を出しています。Nature Medicineの論文を補強する内容だといえます。
Fukuda K, Asoh S, Ishikawa M, Yamamoto Y, Ohsawa I, Ohta S (2007). Inhalation of hydrogen gas suppresses hepatic injury caused by ischemia/reperfusion through reducing oxidative stress. Biochem Biophys Res Commun 28: 670-674.
doi:10.1016/j.bbrc.2007.07.088
この論文は慶應大学との共同研究ではなく、私の研究室から出した論文です。この論文の第一著者の大学院生のKei-ichi Fukuda(福田慶一)は慶應大学の福田恵一教授と同じ名前なので、よく間違われます。福田恵一教授は、林田さんが第一著者の論文の最終著者となっているからです。
林田氏、太田教授らの共同研究第2弾。ラットの脳梗塞に対する水素ガスの抗酸化ストレス作用を見ています。
Hayashida K, Sano M, Ohsawa I, Shinmura K, Tamaki K, Kimura K et al (2008) Inhalation of hydrogen gas reduces infarct size in the rat model of myocardial ischemiareperfusion injury. Biochem Biophys Res Commun 28: 670-674.
doi:10.1016/j.bbrc.2008.05.165
したがって、この論文は林田氏、太田教授らの共同研究の最初の論文となります。
水素水というだけでいかがわしいイメージがついてまわり、太田教授の勤務する日本医科大学ではマイナス水素イオンに関するビラが撒かれるなど、不穏な雰囲気になった時期もあったと聞いています。残念なことだと私は思います。
「マイナス水素イオン」に関するビラではなく、「マイナスイオン」についての東京都からの消費者に対する注意をうながすビラでした。また、「ビラが撒かれた」というよりは、ある会議の席で、無許可・無断で配布した人がいたというほうが正確です(「ビラが撒かれた」ということと同じことかもしれませんが……)。
もっとも、株式会社ブルー・マーキュリーの水素水が、最初からすべてにおいてスキのないものだったとは思いません。ブルー・マーキュリーを起ち上げた室田渉氏について、丸山甲斐『水素の世紀』(幻冬舎ルネッサンス)という本が詳しく記しています。この本を読むと、室田氏はもともとルルドの「奇跡の水」や九州大学・白畑教授の怪しげな「活性水素」理論に関心を持っていたようで、その興味が飽和水素水をつくる機械の開発への着手に弾みをかけたと思えてきます。
本をよく読んでいただければわかると思いますが、「室田氏はもともとルルドの「奇跡の水」や九州大学・白畑教授の怪しげな「活性水素」理論に関心を持っていたようで、」という内容の記載は、その本にはないと思います。少なくとも、室田社長は、私に最初に会ったときから「活性水素とは違う」ことを強調していました。私も「『活性水素』に関連する研究をお願いする」と言われたら話も聞かず即座にお断りしたでしょう。また、私と会う以前にも、室田さんが、水素の研究をしてくれる研究者をいろいろな大学を訪ねて探しまわっていた時に、ある方から「白畑教授を紹介しましょうか?」と勧められそうです。その時「とんでもない。」と即座に断ったという武勇伝(?)も聞いています。室田さんが、はじめから水素分子に注目していたのは明らかです。
しかし厳しいことをいうなら、太田教授は水素分子の物理学的な挙動に関しては専門家とはいえません。水素分子の挙動について、工学や物理学の眼力を持つ専門家から、つまり別の視点からのコメントがほしいところです。水素医学を今後発展させてゆくためには、分子生物学者と工学者・物理学者の共同研究が必要でしょう。さまざまな眼力を持つ専門家による、さまざまな言葉が聞きたいのです。そうすることで多くの人は水素医学研究者に対する信頼感と安心感を持つようになるはずです。
このご意見には全く同感です。同感したことを前提として、生体内の水素分子の研究の深さを示唆するために、私たちの経歴と背景を紹介します。
私は、理学部化学科を卒業しています。当時は、その理学部に生物化学科もありましたから、純粋に物理化学と有機化学と無機化学からなりたつ化学科です。そして、固体表面の触媒反応機構を主な研究テーマとする研究室で卒業研究を行ないました。この卒業研究で、私は、セシウム有機化合物表面の触媒によって、水素ガスと窒素ガスからアンモニアを合成するなどの研究を行なっています。おもな仕事は真空系の実験装置を作るガラス細工でした。
大学院は薬学系の「物理化学」の研究室に進みました。分光学と生物物理が二本柱の研究室でした。この間、東京大学医科学研究所や自治医科大学と共同研究で、蛋白質の物性の研究から医学関連とミトコンドリア研究へと入って行きます。蛋白質(蛋白質合成系のEF-TuやATP合成酵素)の構造的ゆらぎを測定するために、蛋白質を重水(D2O)に溶かし込んで、蛋白質内の水素原子(H)と重水素原子(D)が交換して行く様子を赤外線スペクトラムで追跡して、蛋白質の動的構造変化を追求するという方法を用いました。フーリエ変換赤外線分光器(FT-IR)の国内第一号の機械を使っていました。私の美しいFT-IRのスペクトルは日本本分光学会の機関誌にも紹介されたくらいです。
博士課程ではATP合成酵素の構造変化を対象としました。ATP合成酵素の逆反応はH+輸送ATPaseですから、ここでも水素(H+=プロトン)と関係あったわけです。ATP合成酵素内をH+が通りぬけるのか、H2Oと結合したH3O+(ヒドロニウムイオン)が通るのかなど、分子軌道も含めずいぶん勉強しましたね。
したがって、今から考えると水素にはずっと縁があったわけです。そして、他の生化学者や分子生物学者と比較すれば格段に物理化学の素養があるといってもいいでしょう。化学科の同級生には、水素分子の物性の専門家もいますし、分子構造を計算によって予測する専門家もいます。また、時々同窓会のようなものも開いていますので、水素に関する知識や反応性の予測など相談できる親しい人がたくさんいるわけです。フリーラジカルを測定するためのESR(電子スピン共鳴)が専門の研究者(現在は、ESR学会会長)も、となりの研究室にいましたから、ラジカル測定についてもいろいろ聞ける状況にあります。
水素分子の専門の友人と私と室田社長で話をしたことがあります。室田社長が「水素を維持する容器はどんなものがいいでしょう?」と質問すると、一秒後には「アルミニウムしかありません。」との答えが返ってきました。室田社長曰く「水素を維持する容器としてアルミパウチに到達するまでに、我々素人は1年半も費やしたのに、専門家に聞けば一秒ですか? やっぱり大学の知識はすごいなぁ」。この後、室田は自信をもってアルミ缶の製品開発に向かうことになりました。
次にNature Medicine論文の第一著者の大澤(現在の水素分子医学教授)の経歴にも簡単に触れておきましょう。彼は、工学部の化学工学科を卒業しています。流体力学や分子の拡散速度の計算、溶解論、反応論などについては、彼の友人にたいへんお世話になっています。もし、彼が化学工学科出身でなければ、この研究の本当の意味を理解できなかったでしょうし、この研究をやろうとは思わなかったでしょう。
今思うに、生体内における水素分子の研究は、化学反応や物性についてのかなりの素養と背景がある研究グループでなければ、おそらくは、なしえなかったものであると思います。生体内の水素研究は物理学に裏打ちされた知識なしには進める事はできないものです。単なる思いつきや想像で仮説をたてて研究をすすめるというような表面的なものではないことを、是非御理解いただきたいと思います。
番外編
このような私の経歴を話すと、「学部学生の時は気体分子の反応研究で、今何故、老化や病気の研究なのですか?」と必ず聞かれます。普段は面倒くさいので、「ミトコンドリア研究一筋30年」ということにしています。しかし、本当の答えは、
「私の頭の進歩と学問の進歩によって、複雑な老化や行動も分子反応で理解できるようになった。大学生当時は、溶液などの均一系での触媒反応研究が主流で固体表面(不均一系)の触媒反応は複雑な系とされていた。大学院生のころになると生体内で重要な役割をはたす単一ポリペプチド酵素が大量に精製して研究できる対象になった。さらにATP合成酵素のような複雑でエネルギーが共役する酵素も研究対象になった。さらに、オルガネラの形成が分子レベルで解明できるようになった。そして、病気や老化も分子レベルで記載できるようになった。今まで関わってきた研究テーマをただ並べると一貫性がないように思う人が多いのだが、私にとっては、複雑系を分子反応という言葉で語るというだけのことであり、一貫性という点ではあまり違和感がない。今後は、もっとも複雑な老化や認知症という現象に対して、最も単純な分子で立ち向かうことにしたい。集大成の時期に来たのかもしれない。」
ついでに、筆がすべってきたので、番外編として研究の一コマ、二コマを紹介します。
Nature Medicineの論文のFig3にはESR(電子スピン共鳴)のスペクトルが載せてあります。レフリーから細胞内のヒドロキシルラジカルの量をESRで測定しろというコメントがきました。文献を調べても、細胞内のヒドロキシルラジカルを測定したという信頼できる論文はありません。無理を要求してくるのが審査員なのだとあきらめて、なんとか対策を講じようと熟考しました。ESRの依頼測定をしてくれる会社を見つけて、そこへ培養細胞系を持ち込んで、ESRを測定することにしました。その会社では、感度をあげるように改良したESR測定機械を開発しており、試料をいれる測定容器も特別の改良型です。
第一著者の大澤くんとふたりで1日12時間、2日間休みなく働きました。昼も夜もコンビニから弁当を買ってきてもらいました(私も12時間くらいは集中して実験ができる体力があることがわかったのが成果です)。当然のことですが、普通に測定しても細胞内のヒドロキシルラジカルのシグナルは検出できません。オペレータの人は「無理ですね」という意見でした。そこで、私がオペレーターの人に、レスポンス速度からスキャン速度、積算回数までESR測定条件を細かく指示することにしました。試行錯誤して、やっと細胞内ヒドロキシルラジカルを検出し、水素分子によってそれが減少することを確定しました。その会社の人も「医科大の教授が何故こんなにESRの測定に詳しいのか」と、目を丸くしていましたね。
私たちのNature Medicineの論文を読んだある会社の研究所の方から、
「私たちの研究所でもESRを測定している。こんなにきれいな(ノイズの少ない)スペクトルがとれるはずがない。」
というクレームがつきました。
「細胞内のヒドロキシルラジカルを測定したというのは本当か?」
という疑問が呈されたわけです。そこで、
「私はレスポンス速度をさげて時間をかけて測定したのではないのですよ。レスポンス速度を早くして、スキャン速度を10倍にスピードアップして10回測定(積算)して、平均をとったものですよ。10回積算すれば、計算上ルート10分の1、つまり約3分の1にSN比(signal-noise ratio)を低くすることができます。論文にも測定条件と説明が書いてありますからよく読んでくださいね」
と返答しました。分光学の研究室に所属した経験がなければ、ESRによる細胞内ヒドロキシルラジカルの測定はなしえないことだったでしょう。
ついでに言えば、ストレスによる認知障害を水素分子が抑制するという論文(Neuropsychopharmacologyの論文)に記載されている内容は、記憶とか学習能力による動物行動ついての実験が主ですので、私たちの専門外です。しかし、論文投稿前に親しいその方面の専門家に論文を読んでもらって厳しいコメントを頂戴し、論文を書き直しています。信頼できる専門家に相談すれば、信頼できる論文にできるというのが私たちの考えです。
ちなみに、Neuropsychopharmacologyはインパクトファクター6以上で、Pharmacology&Pharmacy領域の世界で200ある学術雑誌のなかのトップ4に位置する雑誌ですので、厳しい審査を経て採択されることは明らかです。特に、私はブルー・マーキュリー社の顧問をしていることを審査員に対しても明記しているので、疑いの目をもってより厳しく審査されたはずです。
ついでに裏話をしましょう。Neuropsychopharmacologyに、投稿論文がほぼ採択されるという連絡がきました。普通ですと一安心ということなのですが、今回は違っていました。いろいろ考えるうちに不安が募るばかりなのです。ひとつひとつ実験結果とその記録を検証していくと、どう見ても問題がないはずなのですが、何となく不安が解消されません。この論文の影響が大きいことが予測されますので、万が一にも、結果が他の研究室では再現されないとなると大変です。
そこで、第一著者の大学院生にもう一度同じ実験を繰り返すことを頼みました。論文が採択されてから再試をするということは、今までに例がありません。その大学院生は不満も言わずに、素直にもう一度同じ実験を行なうことに同意してくれました。「もう一度」というのは簡単ですが、実験をやる本人からは、7週間にわたって同じ実験をしなくてはならないわけですからたいへんです。その結果、前と同じ結果がでたので、ほっとした次第です。安心したそのころに、電子版に論文が発表されました。実験は正直です。でも、水素の研究は気苦労が多い。
posted by 瀬名秀明 at 20:10| 読んで書く、書いて読む
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