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2008年01月25日

PaPeRoと2010年の未来

 1月13日、「PaPeRoアプリケーションチャレンジin仙台」のアイデア発表会が、せんだいメディアテークで開催されました。ご来場いただいた皆様、ありがとうございます。
 すでにRobot Watchにも記事が出ていますね。
→「「PaPeRoアプリケーションチャレンジ in 東北」アイディア発表会開催〜仙台から発信する、2010年のPaPeRoのお仕事とは?
「ロボコンマガジン」誌の次号にも取り上げていただけるとのこと。

 今回のコンテストは、おそらくロボット研究者主体のシンポジウムではまずお目にかかることのできない発表が目白押しで、ロボット文化を広げる試みとしてはとても意義のあることだったのではないかと思います。
 まず重要なのは、PePeRoが人間と共存する2010年のアプリケーションを思い描いてください、という課題そのもの。遠い未来の空想を語るのではなくて、まさに「あしたのロボット」を発想するわけです。実はこれがいちばん人間にとって難しいことは、「愛・地球博」をはじめ、これまでのロボットイベントが如実に示してきた通り。
 このコンテスト、ワークショップ部門と一般部門に別れていて、一般部門はアイデアを書類に記載して提出、そこから普通に審査するわけですが、おもしろいのはワークショップ部門。かならず3人以上のグループでエントリーして、月に一回仙台のNEC東北でワークショップに参加しなければなりません。そこで実際にPaPeRoを見て、みなでアイデアを練り込んで、発表会に備えるわけです。発表準備の費用も主催者側が用意するので、多くのチームが流麗なフラッシュムービーやパンフレットなどをつくって審査員にアピールします。

 発表会では、寸劇をやってみせるチーム、実際にPaPeRoと会話してみるチームなど、皆が壇上で工夫を凝らします。おしゃれなフィラッシュムービーや寸劇でロボット共存社会の有用性を語るという発想自体が、まずいままでのロボットイベントからすると型破りなはずで、こんな発表の仕方もあったのか、とロボット研究者はびっくりしたかもしれません。
 参加したチームは医療・福祉・経済などの学生さんや一般社会人がほとんどで、ロボットを実際につくっている人たちではありません。つまりロボットの機構とか、PaPeRoに何ができて何ができないのかといった、具体的な技術の限界と可能性も、大雑把にしか出場者には伝えられていなかったはずで、これも斬新な試みだったと思います。ロボット研究者なら技術の限界を見据えた上で未来を想像するでしょう。しかし今回のコンテストで発表された未来像は、医療・福祉・経済などをまさにいま学んでいる学生が、ロボット工学とは違った立場で想像したものです。
 たとえば、豪華客船の各客室に執事PaPeRoを置いて、船内のイベントをエスコートしよう、というアイデアが出ていました。図書館に来た小さな子が、PaPeRoと対話しながら好きな本を探し、本棚までいっしょに歩いて行き、その棚の前でさらに別の本を探すというストーリーを描いたチームもありました。このふたつが優秀賞として賞金30万円を獲得しています。
 ロボット研究者なら「技術的に古い」「すでに検討され、捨てられたものである」というところかもしれません。他のチームの発表も「夢物語に過ぎる」というものがありました。この期待像のギャップをあぶり出せたことそのものが、今回のコンテストの成果だったのではないでしょうか。図書館のアイデアにしても、小さな子がPaPeRoと会話するときは、まず顔や会話で相手の認識させておいて、いざ貸し出し履歴を調べるときは子どもにIDカードを提示させてPaPeRoに認証させる、というディテールが組み込まれていました。セキュリティ問題に新しいディテールを提示しています。このあたりのリアリティはロボット研究者にとっても注目できるところでしょう。豪華客船にしても、そういう非日常のセレブ空間でロボットを使うという発想がいい。
 残念ながらロボット研究者を唸らせるほどのアイデアを出してきたチームはいませんでしたが、それでも発表にムービーや寸劇といったストーリー性を持たせたことによって、生活に根ざしたディテールが冴える結果となったわけです。ここはロボット研究者が見落としがちなところで、違和感を含めインパクトのあったところでしょう。

 一般部門ではPaPeRoのかわいいキャラクターに着目して、そのキャラクターがついた携帯電話を販売し、その携帯電話の中にPaPeRoというキャラクターを登場させて、メール作成や地図検索などを手伝ってもらうというアイデアが優秀賞を獲得しました。これなどPaPeRoがロボットである必要性すら稀薄なのですが、実際に開発できそうという点では一等でしたね。
 審査員もロボットの専門家でない方が多く、何を評価するのかという基準も含めて私にとっても新鮮な体験でした。
 ごくふつうにしかロボットをしらない人が、ロボットに対して何を思い描き、どんなディテールを語れるのか。今回のコンテストはその意味で、従来にないおもしろさを出せたように思います。

 このコンテストは継続して、きちんと先代の文化に育て上げてゆくべきだろうと思います。そのうち工学系の学生さんたちも参加して、互いの発表に違和感を持ち合い、議論が始まって、そこからよりよいアイデアが生まれてくるだろうと思います。そこまでやらなければならないでしょう。
 やがてロボットと人の共存社会が来たとき。「ああ、この共存のアイデアは仙台が発祥の地なんだよ」といわれるようになれば嬉しいですね。
 今度も「PaPeRoアプリケーションチャレンジin仙台」が続くことを期待しています。
posted by 瀬名秀明 at 20:35 | TrackBack(0) | 読んで書く、書いて読む | 更新情報をチェックする
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