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2007年09月07日

作家と科学者は、対話できるだろうか

ワールドコン企画以降、パネルにご参加いただいた作家や研究者の方々から、刺激的なご提案をいただいています。

まず、作家のテッド・チャン氏とメールで話すことができました。彼は第一部のとき、客席から見ながら、なぜ作家たちは科学者からの問いかけに応えないのか、と不満を感じていたようでした。もちろんこれは私の司会進行の手際が悪かったことに原因があります。第二部の議論では、間接的ながら、作家たちは問いかけに応えていたと私は感じています。
しかしチャン氏の落胆は、おそらく壇上でのやりとりよりも、自分自身に向けられていたものだったのかもしれません。なぜ作家は科学者からの問いかけに応えられないのか、と、彼は自分自身にも問いかけていたのかもしれない、そう感じます。彼の誠意に感銘を受けた、とスタッフのひとりが私にメールで語ってくれました。
チャン氏からの呼びかけにより、これからパネリストとチャン氏との対話が進んでゆきそうです。それぞれの対話は各パネリストに委ねますが、大いなる実りとなることを期待しています。

またパネリストの研究者のひとりから、作家と科学者をつなぐネットワークコミュニティのようなものはつくれないだろうか、というご提案をいただいています。
これまでのSFコミュニティのあり方とはまた違った、物語と科学のコミュニケーションを築けないだろうか、ということです。もちろんここにはSF作家だけでなく、ミステリーやその他さまざまなジャンルの作家が集ってもよいでしょう。仲間内の愉しさだけではなく(それも大切なものではあるでしょうが)、大人のコミュニケーションをつくることができれば、それはこれからの物語と科学の関係にとっても有効でしょう。

むろん、作家がすべて、対話を好むというわけではありません。そんなものは不要、作家はただ作品を書くことにのみ集中すればよいと思う人も多いでしょうし、もともと仲間内以外との対話は苦手だという人も多いでしょう。作家すべてに必要だとは私も思いません。ただ、科学者との対話や議論に魅力を感じる作家は、これまで文学の世界では亜流・傍流とされてきました。しかしこれからはそんなことを考えなくてもよいのかもしれません。
ごく自然な対話や議論によって、少しばかり互いに豊かになれる。そして互いに明日の研究や創作に戻り、少しばかり以前よりもおもしろい仕事ができるようになる。そのくらいの豊かさこそが、本当の愉しさといえるでしょう。

少しずつ考えて、できるところから実現してゆきたいと願っています。継続してゆくことが大切なのでしょう。

私は12年前、『パラサイト・イヴ』でデビューしたとき、さまざまな批判を受けました。正直なところ、SFについて考えると、いまでも身体が震え、呼吸が苦しくなります。大袈裟ではなく、これは事実です。私にとってSFは持病となってしまいました。
私はずっと孤独であると考えていました。しかし12年も経って、実は時代も変わっていたのですね。
うまくいえませんが、そう感じました。
posted by 瀬名秀明 at 01:57 | TrackBack(0) | 読んで書く、書いて読む | 更新情報をチェックする
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