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2006年02月25日

サンノゼ・ダラス旅行 その4

18日は午前8時からAmerican Flyersで、AさんのCFI免許更新講習。CFIはCertified Flight Instructorの略で、飛行教官の免許のこと。Aさんはこの免許を持っているので、俺に座学を教えることができるのである。
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さて、この日は俺も10:00からセスナ172でのフライト訓練を予約していたのだが、昨日から猛烈な寒気が降りてきて、freezing ice、しかも雲が1000フィート以下に降りて、とてもVFRでは飛べない状態。訓練教官はAmerican Flyersの若い男性にお願いしていたのだが、日銭を稼がなければならない彼らが飛べないというのだから、本当に飛べないのだ。(ちなみにAmerican Flyersでの1時間の訓練費用は200ドル。決して安くはないが、American Flyersは新品のセスナ172を貸してくれる、また教官の質もよいという自負から、この値段を設定しているようだ。Aさんがわざわざここで免許の更新をおこなうのも、そのブランドを信頼してのものである)
そこでフライトは諦め、14:00から筆記試験を受けることにする。この日の朝、Aさんがデニーズでendorsement(この人は筆記試験を受けられますという承認)をフライトログに書いてくれた。私はまだ座学(ground school)を一年間Aさんと続けたのみで、フライト訓練はしていない。だからフライトログはまっさらであった。
俺が使っていたテキストは『Private Pilot Test Prep 2004』【amazon】で、随時『AIM-j(Aeronautical Information Manual Japan)』【amazon】や三澤慶洋『図解でわかる飛行機のすべて』【amazon】などを参照していた。おおむね月一回のペースで、Aさんに事務所に来ていただき、2〜3時間かけて座学をおこなう。1月以降は銀座に安いレンタルスペースを借りた。
プライベート・パイロットの筆記試験は三者択一形式。コンピュータ画面上で答をクリックする。すでに問題は公開されていて、それが『Test Prep』に載っている。この数百問の中から、実際の試験では60題が出され、うち7割を正解すれば合格となる。制限時間は2時間半。
問題そのものは、まあわかりやすいものが多いのだが、まったく飛行機のことを知らない人には何が何だかわからない。最初のうちは航空の専門用語にも戸惑う。もちろん問題はすべて英語で書かれている。Aさんからは、「免許を取ることだけに一生懸命になってしまい、後は気が抜けてしまう人が多い。なるべくゆったりとした気持ちで、一生の趣味にしてほしい」といわれていた。だからそのつもりでのんびりとやってきた。なのでにわかに試験を受けるとなるとちょっと焦る。だが再び渡航する面倒を考えると、やはりここで受験してしまった方がいいと思い直したのだ。
ということで、朝からAmerican Flyersの一室を借りてにわか勉強にいそしむ。やがて予約の時間がやってきて、試験室へ。直前にもうひとり、アメリカの男性が試験を受けに来た。我々は背中合わせでコンピュータのモニタに向かう。
最初のうちはコンピュータの使用法の説明が延々と続く。これだけで15分くらいかかってしまった。肝心の試験は、制限時間いっぱいまで使う。
結果は72点。なんと、合格であった。「2点もエクストラボーナスがあるよ」とAmerican Flyersの人にいわれたが、まさにぎりぎりだったわけである。CFIの教習を終えてきたAさんもびっくりしていた。「でも72点くらいが絶妙なんですよ。点数が高すぎると、口頭試験のときに日本人はあまりしゃべれないから、筆記試験の高得点をかえって疑問視されがち。だからこのくらいのほうが気楽に受けられる」と。
受験費用は90ドル。やや高いが、これはAmerican Flyersが代行しているからで、空港など然るべき場所で受験すればもっと安いだろう。だが座学にかけた金は実質テキスト代くらいのものだし、渡航費用も考えればずいぶんと安上がり。
筆記試験に合格したら、2年以内に実地試験に合格すればよい。さて、ならば今年から、実地訓練を受けてみよう、と思ったのであった。

夜はAさんの知人で、Higher Power Aviationの教官でもあるジョー・モリスと食事。今度はアディソンの「Trail Dust」へ。ジョーは70歳を過ぎていて、第二次大戦や朝鮮戦争でも戦った経験があり、航空の生き字引みたいな人(零戦パイロットの坂井三郎氏も知っていたようだ)。しかしとても日本びいきである。で、テキサスに広大な土地の牧場を持ち、まず家まで道をつくるためにパワーショベルを購入、自分で修理し、しかも家まで自分で建ててしまった。
「パイロットになるには、システムを知ることが大切だ。どうやって飛行機が飛ぶのか、そのシステムを、自分の胸で、心で知ることだ」
「毎日飛ぶことが必要だ。ちょうど頭を毎日使わなければならないのと同じように」
といったジョーの言葉は含蓄に富んでいた。
システムを心で知る、というのは、飛行機に限らずすべてに当てはまるよい言葉だと思う。小説も、感性だけではいけない。論理だけでもいけない。システムを心で知って初めて神髄がわかるようになるのだろう。

その後、モーテルでAさんと飲みながらいろいろ話す。航空と軍事の関係なども。日本のロボットは、いま岐路に立たされている。ソニーもAIBOの生産を中止したが、これでアメリカにロボットも持って行かれるかもしれない。アメリカは日本に車は許したが、航空は決して渡さなかった。
ロボットも軍事目的であれば巨額の予算が投入され、デファクトスタンダードになるだろう。日本はその道を選ばなかった。俺自身、『ロボット学創成』で、軍事に頼らないロボット産業の道をつくろうと書いた。だが結局俺は軍事でない対案を示すことができなかった。日本は軍事以外のロボット産業の道をつくらなければならないはずだが、たぶん難しいだろう。20年後にはすべてアメリカに持って行かれているかもしれない。

もうひとつ、Aさんからうかがってなるほどと思ったことがある。737のtype ratingを受けるような人はどういう人なのかとの問いに、Aさんは冒険をしない人だと答えたのである。飛行機乗りというと、フロンティア精神に溢れた人だというイメージが強い。それはそれで間違いではないだろう。だが737のように客を後ろに乗せているパイロットは、あの雲の中へ入ってみたい、ぎりぎりの性能で飛んでみたい、という欲望を抑えて、いかに揺れずに運行するか、いかにソフトに着陸するか、といったことにより多くの誇りと歓びを感じる人でなければならないというのである。それが制服を着てコクピットに座るべき人の資質だというのである。なるほど、と改めて思った。

19日は一日オフ。朝8時にAさんをAmerican Flyersに送り届け、その後はレンタカーであちこちを見て回ろうと思ったが、ものすごい寒さで高速道路は凍りつき、交通規制がかかっていた。なので近くのGalleriaというデパートに行く。あと、学生からお薦めされていたBlue Bellというアイスクリームを買ってみる。
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20日は13時間かけてダラスから成田へ帰国。ちょうどD/FW空港のロビーで、イラクから帰還した兵士たちを拍手で空軍が迎え入れているところに遭遇した。
というわけでおしまい。
posted by 瀬名秀明 at 00:00 | TrackBack(0) | 飛行機の話 | 更新情報をチェックする
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