【このエントリーの要約】
・「活性水素水」と「水素水」はまったく別のものです。日本医科大学の太田成男教授らがおこなっている研究は水素分子が水に溶けたsaturated hydrogen water(飽和水素水;水素水と略称される)に関するものであり、「活性水素水」とは無関係です。
・これは水素分子の抗酸化ストレス効果に関する研究について、基本を理解するためのリンク集です。学術専門誌のウェブサイトへのリンクもありますが、大学や研究機関に勤めている方ならこれらのリンクをたどって原著論文に直接あたることができます。一般の方も関連ウェブページへのリンクをたどることで、社会的な情勢がわかります。
・現状、さまざまなウェブページで「活性水素水」と「水素水」を混同した記述が見受けられます。まずその記事が「活性水素水」と「水素水」を混同していないか、充分に確認することをおすすめします。
・水素医学そのものはインチキではなく、大きな可能性を秘めた新しい科学分野だと私(瀬名秀明)は考えています。バイアスのかかった目で水素医学を安易に論じることは、科学の発展によい結果をもたらしません。私たちは冷静な判断のもとでこの新しい科学の今後を見据えていきたいものです。
【関連するエントリー】
→「「活性水素水」と「水素水」はまったく別のものです 【水素水その1】」
→「太田成男先生からの手紙 【水素水その3】」
→「水素研究会発足記念シンポジウムの内容公開 【水素水その4】」
→「「一般の皆様へ」研究室のスタンスを伝える 【水素水その5】」
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水素分子の抗酸化ストレス効果に関する研究について、基本を理解し、考えるためのリンク集をつくってみました。瀬名の個人見解も併せて記載しました。
【リンク集】
・有限責任中間法人 水素研究会 のホームページ
*水素医学の発展を推進する団体です。後述参照。【追記:2008.9.29】
・日本医科大学老人病研究所 水素分子医学研究開発拠点 の紹介ページ
・水素医学HP *日本医科大学老人病研究所 水素分子医学研究開発拠点 のホームページ
・日本医科大学老人病研究所 生化学部門
*太田成男(おおたしげお)教授が主催する研究室で、ミトコンドリアを主体とした生命現象全般を扱っています。太田教授は客観的に見ても、ミトコンドリア研究では優れた業績を上げてきた人物といってよいでしょう。香川靖雄先生の弟子筋にあたります。太田教授の科学観やこれまでの研究成果については拙共著『ミトコンドリアのちから』(新潮文庫)にまとめてありますので、機会があればぜひご一読下さい。太田教授が水素分子の抗酸化作用について研究を始めたのは、ミトコンドリアにおける活性酸素の働きについて研究を続けてきたからだと思われます。水素ガスの抗酸化作用について示したNature Medicineの論文についても、『ミトコンドリアのちから』ではできるだけわかりやすく解説しました。
・太田成男教授のプロフィール
・日本ミトコンドリア学会 *その太田教授らが中心となって設立した学会です。ミトコンドリア病の患者さんたちにも親身となって接しており、好感が持てます。設立の経緯は拙共著『ミトコンドリアのちから』で詳述しました。
・株式会社マイトス *太田教授が取締役を務める、日本医科大学発のベンチャー企業です。マイトスとはMitos、つまりミトコンドリアの略称。
・株式会社ブルー・マーキュリー *その太田教授が、長寿科学振興財団理事長・元厚生労働省局長・水素研究会会長である小林秀資氏と共に、顧問を務める会社のホームページです。太田教授の研究内容について、しばしばConflict of interest(利益相反)について疑問が出るのは、彼らがこの会社の顧問をしているからでしょう。今後、しっかりとした説明がウェブページに記載されることを望みます。
*なおこの会社が販売している「おいしい水素水」は、一部の人が主張している「活性水素水」とは無関係。「活性水素水」は「活性水素」なるものが溶けているといわれる水のことですが(ただし後述するように、「活性水素」は極めて過酷な条件でなければ発生しないといわれています)、ふつうに水素水といえば水素分子(H2)が溶けた水のことを指します。「おいしい」とありますがこれは「おいしい水素水」というひとつの商品名なのであって、味のよさを保証しているわけではありません。瀬名も実際に飲んでみましたが、味はふつうの水と同じでした。溶解した水素分子は分子量の小ささゆえに、ペットボトルなど多くの容器を通過してしまいます。しかしアルミニウムは水素分子を通しにくいので水素水の保存に適しており、そこでこの会社は水素水の販売にアルミパウチを利用しているのです。
*注意! 現時点では水素水の人間に対する抗酸化効果は研究初期段階ですから、この「おいしい水素水」を飲みたいのなら、いまはごくふつうの意味で「こだわりの飲料水」として飲むくらいがよいと瀬名は思います。
【水素分子の抗酸化ストレス作用についての学術論文一覧】
日本医科大学の太田教授らのグループが最初に発表した、水素ガスの抗酸化ストレス効果についての論文。ラットの脳梗塞に対して2%水素ガスの吸入が劇的な効果をもたらすことを示しています。
内容の要約:3種類の方法で培養細胞に急性の酸化ストレスを誘導させ、水素ガス(H2)の効果を調べたところ、水素ガスは細胞傷害性の極めて高い活性酸素種ヒドロキシルラジカルだけを選択的に還元して、細胞を有効に保護した。生理学的役割を持つ他の活性酸素種とは反応しなかった。また局所虚血と再潅流を模擬したラットに水素ガスを吸入させたところ、酸化ストレスの作用が弱められることで脳損傷が顕著に抑制された。
Ohsawa I, Ishikawa M, Takahashi K, Watanabe M, Nishimaki K, Yamagata K et al (2007). Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals. Nature Medicine 13: 688-694.
doi:10.1038/nm1577
*「Nature Medicine」誌は、著名な総合科学誌「Nature」の姉妹誌。一流の査読誌といえます。
*「Nature Medicine」誌の要約ページはこちら(英語)とこちら(日本語)。大学関係者ならここから原著論文がダウンロードできるはず。
その号の「News and Views」欄に掲載された紹介記事。太田教授らの研究の意義がわかりやすく解説されています。
Wood KC, Gladwin MT (2007). The hydrogen highway to reperfusion therapy. Nature Medicine 13: 673-674.
doi:10.1038/nm0607-673
*「Nature Medicine」誌の要約ページはこちら(英語)とこちら(日本語)。大学関係者ならここから原著論文がダウンロードできるはず。
Fukuda K, Asoh S, Ishikawa M, Yamamoto Y, Ohsawa I, Ohta S (2007). Inhalation of hydrogen gas suppresses hepatic injury caused by ischemia/reperfusion through reducing oxidative stress. Biochem Biophys Res Commun 28: 670-674.
doi:10.1016/j.bbrc.2007.07.088
*ScienceDirectの該当ページで要約が読めます。大学関係者ならここから原著論文がダウンロードできるはず。この「Biochem Biophys Res Commun」(略称BBRC)も分子生物学業界では有名な雑誌です。
*【追記2008.8.14】第一著者のKei-ichi Fukuda(福田慶一)さんは太田研究室の大学院生。慶應義塾大学の福田恵一教授ではないので、記述を訂正しました。福田恵一教授は、この後に示す林田健太郎氏の論文の最終著者。
ここまではマウスやラットなど齧歯類に対しての実験結果でしたが、2008年3月、京都府立医科大学から「水素水を糖尿病患者に飲ませると抗酸化作用が認められた」という論文が発表されました。マウスではなく人間に対する効果であり、水素ガスではなく水素を溶かした水(水素水)の効果を見ています。怪しげな白畑教授の論文を引用するなどツメは甘く、サンプル数も少ないのですが、注目に値する結果です。
内容の要約:メタボの患者30人に水素水を飲ませた。8週間にわたり、900ml/dの水素水を飲ませたところ、LDL値の顕著な減少が見られた。脂質・糖質の代謝改善に水素水の飲用は有効だと思われる。U型糖尿病の進行を遅らせることができると考えられる。
Kajiyama S, Hasegawa G, Asano M, Hosoda H, Fukui M, Nakamura N et al (2008) Supplementation of hydrogen-rich water improves lipid and glucose metabolism in patients with type 2 diabetes or impaired glucose tolerance. Nutrition Res 28: 137-143.
doi:10.1016/j.nutres.2008.01.008
*ScienceDirectの該当ページで要約が読めます。大学関係者ならここから原著論文がダウンロードできるはず。
2008年6月、太田教授・大澤教授らのグループが、今度は水素ガスではなく水素を溶かした水(水素水)を使い「水素水をマウスに飲ませると認知機能の低下が抑制される」という論文を発表しました。認知機能の低下は抗酸化物質で抑制できる、というところが論文の主眼です。
内容の要約:マウスを狭い部屋に長期に閉じ込めるストレスを与え続けると、脳に酸化ストレスが蓄積し、神経細胞の分裂能が低下し、認知機能が低下する。同じ条件のマウスに水素水を飲ませ続けると、酸化ストレスが改善し、神経細胞の分裂能の低下は抑制され、認知機能の低下も抑制される。認知機能は、3つの別の方法にて測定し、すべての方法で、認知機能の低下抑制が確認された。
Nagata K, Nakashima-Kamimura N, Mikami T, Ohsawa I, Ohta S (2008). Consumption of Molecular Hydrogen Prevents the Stress-Induced Impairments in Hippocampus-Dependent Learning Tasks during Chronic Physical Restraint in Mice. Neuropsychopharmacology advance online publication, 18 June 2008: 1-8.
doi:10.1038/npp2008.95
*「Neuropsychopharmacology」誌の要約ページはここ。大学関係者ならここから原著論文がダウンロードできるはず。
*この雑誌のインパクトファクターは6以上で、査読誌の中でも一流の部類に入ります。
*論文の末尾には「DISCLOSURE/CONFLICT OF INTEREST」として、太田教授が株式会社ブルー・マーキュリーの科学顧問であること、大学発ベンチャー・株式会社マイトスの取締役であることがきちんと明記されています。また他の共著者にconflict of interestはなく中立であることも記されています。
太田教授らは「実験医学」2008年8月号で、水素ガス及び水素水の研究結果について記事を書いています(特集 ミトコンドリアの遺伝機構とエネルギー代謝制御)。日本語で書かれているので興味のある人は読んでみるとよいでしょう。
太田成男, 大澤郁朗(2008) 水素分子による新しい概念の抗酸化治療法と予防医学. 実験医学 26: 2074-2080.
*「実験医学」2008年8月号の紹介はここ。
*「実験医学」は分子生物学分野の第一線で活躍している日本の教授らが、主に大学院生や業界向けに日本語で研究成果を伝える役目の雑誌です。大学生協の購買部なら取り扱っていますし、大手書店の医学コーナーに行けば置いてあります。ウェブ書店からも購入可能です。 【amazon】【bk1】
*総説の最後には、次の一文があります。
「なお、「電解還元水」「活性水素水」「飲む水素」「マイナス水素イオン」などの健康飲料あるいは健康サプリメントと称するものとは、本研究ならびに本稿は全くの無関係であることを明記します」
慶應義塾大学の林田健太郎氏、太田教授らの共同研究
Hayashida K, Sano M, Ohsawa I, Shinmura K, Tamaki K, Kimura K et al (2008) Inhalation of hydrogen gas reduces infarct size in the rat model of myocardial ischemiareperfusion injury. Biochem Biophys Res Commun 28: 670-674.
doi:10.1016/j.bbrc.2008.05.165
*ScienceDirectの該当ページで要約が読めます。大学関係者ならここから原著論文がダウンロードできるはず。
東邦大学などによる、水素水の新しい論文。ビタミンC欠損マウスに水素水を与えたところ、活性酸素の発生量が顕著に減少したことを示しています。【2008.9.29追記】
*東邦大学によるプレスリリースはこちら。「水素水で活性酸素を除去!?〜水素水の飲用で脳の活性酸素が減少する〜」
*後で論文へのダイレクトリンクを貼っておきます。
*やはり前回の論文(京都府立大学など)と同じく、白畑教授の論文が引用されていますね。ちょっとふしぎです。
【疑似科学批判の動向と水素水】
ここから先は瀬名秀明個人の見解です。
以前よりインターネット内では「活性水素水」や「マイナス水素イオン」などの健康飲料と自称するものに対して、疑似科学であるとの批判が活発におこなわれてきました。そのような雰囲気が広まっていたため、多くの人が水素分子を溶かした水(水素水)の医学的研究に対しても、最初からバイアスのかかった目で見る傾向が強かったように思います。ひとつの例をここで示しましょう。2008年7月18日、太田教授らのNeuropsychopharmacologyの論文内容が、讀賣新聞で報道されると、その記事に対して強い反応がウェブ上で起こりました。讀賣新聞の記事はYahoo!ニュースに転載され、そしてこのふたつの記事に対して数十人が「はてなブックマーク」にコメントを書き入れましたが、その多くは印象的・反射的なコメントとなりました。Wikipediaの「活性水素水」の項目にも太田教授の名が書き込まれ、一時は記述が混乱しました(現在は落ち着いています)。
→はてなブックマーク > 水素水に記憶力低下抑制効果、日医大教授がマウスで確認 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
→はてなブックマーク > 認知症予防に道、水素水が記憶力低下を抑制(読売新聞) - Yahoo!ニュース *ふたつのはてなブックマークで雰囲気は異なっており、後者のほうが冷静なコメントが多いです。コメントが蓄積されるにつれて「場の空気」が生まれてきていることがわかります。
→活性水素水 - Wikipedia *画面左上の「ノート」もクリックして読んでみましょう。追記や削除の様子も画面左上の「履歴」から辿れます。
一連の水素分子研究に関して、太田教授ら日本医科大学はインターネット上に簡潔明瞭なプレスリリースを出してきませんでした。そのためウェブから情報を検索し判断したい人たちの期待に応じることができず、結果的にこのような混乱を招いたのだと思います。
「水素水」という名前は確かに「活性水素水」と間違えやすいものです。紛らわしい名前を使わないでほしいという批判もあるでしょう。すばやくウェブで情報を公開するべきだという批判もあるでしょう。しかし新聞記事を冷静に読むことで多くの混乱は避けることができます。反射的な態度で「これは疑似科学だ」と決めつけてしまうことは、商品の内容を吟味もせずに「ナントカ還元水は健康にいいらしいから買ってみよう」と手を出してしまうことと大差ありません。どちらもしっかりと考えることをせず、周囲の空気に流され、他人の判断に身を委ね、印象で物事を決めてしまっており、どちらも同じように問題がある行為だと私は思います。
今後「水素水」について書かれた記事やブログなどを見つけたら、その記事が「活性水素水」と「水素水」を混同していないか確認してみることをおすすめします。
もっとも、株式会社ブルー・マーキュリーの水素水が、最初からすべてにおいてスキのないものだったとは思いません。ブルー・マーキュリーを起ち上げた室田渉氏について、丸山甲斐『水素の世紀』(幻冬舎ルネッサンス)という本が詳しく記しています。
ここに疑似科学と実際の科学の複雑でおもしろい関係性があると私は思います。だからこそ、私たちは反射的な疑似科学批判ではなく、冷静な目で研究成果を見極めてゆく必要があるのです。
*【追記2008.8.14】上記のうち、室田氏が最初は「奇跡の水」や白畑教授の「活性水素」理論に関心を持っていたように思える、という瀬名の見解は、『水素の世紀』を読み直してみて、深読みのしすぎであったと感じましたのでお詫びと共に撤回します。ニュートラルに『水素の世紀』の文面を追えば、室田氏は「奇跡の水」や「活性水素」の効用に関する話題を聞いて、そこに自分がすでに注目していた水素分子の可能性を改めて見出すと共に、「活性水素」仮説には最初から疑念を持っていた、と読み取れます。
太田教授はまず培養細胞にアンチマイシンで酸化ストレス(ヒドロキシルラジカル)を誘導し、ここに水素水でつくった培地を添加しました。ヒドロキシルラジカルを発生させた細胞のほうは、丸く縮んで棘のような短い突起を出してきます。ところが水素分子を溶かした培養液の細胞は、通常とほとんど変わらない表情を見せました。このとき太田教授はプロフェッショナルな科学者の目で、「この研究はいける」と確信したのだと聞いています。水素水の実験を始めて3日目のことだったそうです。私は研究の内容を理解するとき、このようなプロフェッショナルな眼力(実験力といってもいいでしょう)の共有がとても大切だと感じています。
おそらくいま、太田教授の研究に対して疑問を持つ人がいるとすれば、「なぜ水素分子が体内でそんな効果を示すのか?」「いったい水素分子はどのような挙動を見せているのか?」ということが現時点の結果ではわからないからでしょう。ここでいう「水素」とは何か、ということについて、太田教授は講演で次のようにまとめています。
H2 (水素分子、分子状水素)水素ガス
水素分子は水に不溶と信じている人が少なくないが、モル濃度では酸素と比べて遜色ないくらい水に溶解する。0.8mM(18ml/L)程度溶ける。大気中で1%の水素ガスを吸引すると、血液中の水素濃度は8μMになる。酸素は20℃で1.3mM(31mL/L)溶ける。
H+ (水素イオン)酸性
H (原子状水素、活性水素)
放電(0.5mmHg)、1500℃(タングステン中)で発生する。活性水素は実在せず疑似科学であるといい切ってしまうとウソになるが、体内で存在できるとは考えにくい。
H- (ヒドリドイオン、マイナス水素イオン)
NaH、CaH2など金属と結合しているときのみ発生。(水反応可燃性物質)
太田教授が「水素」というのは、上のふたつ、水素分子と水素イオンのことであり、ふつうは水素分子のことを指す。下のふたつは太田教授の研究と無関係。
しかし厳しいことをいうなら、太田教授は水素分子の物理学的な挙動に関しては専門家とはいえません。水素分子の挙動について、工学や物理学の眼力を持つ専門家から、つまり別の視点からのコメントがほしいところです。水素医学を今後発展させてゆくためには、分子生物学者と工学者・物理学者の共同研究が必要でしょう。さまざまな眼力を持つ専門家による、さまざまな言葉が聞きたいのです。そうすることで多くの人は水素医学研究者に対する信頼感と安心感を持つようになるはずです。
活性酸素種は強い酸化力を持ち、細胞内に酸化ストレスを生じさせ、老化や病気の原因となると考えられています。ただ、多くの活性酸素種は低濃度においては重要な生理的役割を担っていることがわかってきました。ビタミンCなど還元力の強い物質は、これらの有益な活性酸素種の働きを損なう可能性があるというのが太田教授の見解です。そのなかでヒドロキシルラジカルという強い酸化力を持つ活性酸素だけが有益な生理作用が見つかっていない、だからこれだけを選択的に消去するのが大切であり、そのためには還元力の弱い水素分子が有効だ、というのが太田教授の考えです。
この仮説については今後も学術的な検討が必要ですが、いまのところなかなかおもしろく、わくわくするような仮説だと瀬名は考えています。
2008年7月29日、「有限責任中間法人 水素研究会」が発足し、その記念シンポジウムが開催されて、瀬名もパネリストのひとりとして参加してきました。交通費や謝金は一切受け取らず、懇親会も辞退し、ニュートラルな立場として意見を述べてきました。
太田教授の基調講演に続いて、太田教授や瀬名の他に次の人々がパネリストとして壇上に並びました。
小林秀資氏 株式会社ブルー・マーキュリー顧問 水素研究会会長 長寿科学振興財団理事長=元厚生労働省局長
林田健太郎氏 慶応義塾大学医学部 循環器内科 心臓カテーテル班 副主任 動物実験で水素ガスが心筋梗塞に有効である事を発見し、臨床試験へと進もうとしている
町出充氏 日本医科大学老人病研究所 水素分子医学研究開発拠点 水素医学寄附研究部門に赴任したばかりの分子生物学者
河合薫氏 東京大学大学院医学系研究科客員研究員 フリーアナウンサー/キャスター
水素研究会の目的
1.水素関連分野の学術・医学研究の推進
2.水素関連分野の学術・医学研究への助成
3.水素関連商品の評価・適性化
4.水素関連分野と商品に関する啓蒙活動
今後、多くの若い研究者の情熱を掻き立てる研究会となることを瀬名は望みます。まだ公式ウェブサイトはできていないようですが、的確で迅速なウェブ活動がこれから展開されてゆくことを期待します。
→【集う】「水素研究会」発足記念懇親会 2008年8月4日20:47配信 産経新聞
太田教授がかつて瀬名に語ったことで、印象的だったものがありました。日本では和田心臓移植事件があったために、臓器移植へのおかしなイメージがついてまわり、患者が国内で移植を受けられるようになるまで長い時間がかかった。水素水も同じようなものだ。日本では水素水に対するいかがわしいイメージが定着してしまったために、大手企業はなかなか研究に手を出せない。だが海外に行くとそのようないかがわしいイメージはまったくない。今後、水素水は海外からの逆輸入のようなかたちになるのではないか、と。
水素水というだけでいかがわしいイメージがついてまわり、太田教授の勤務する日本医科大学では
*【追記2008.8.14】以前に太田教授からうかがった話をもとに書きましたが、より正確な表現を太田教授よりいただきましたので、お詫びして文面を差し替えます。
最後に、瀬名がパネル席上で引用した、アメリカの作家リチャード・パワーズの言葉をここでも紹介しておきます。
「優れた科学者は、専門分野を、深めるより拡張する。一般人は科学者に謎の回答を求めるが、彼こそが新たな謎を世に示す張本人」(朝日新聞2006年4月11日)
これは科学のみならず小説についても当て嵌まることであり、私の好きな言葉です。今後の水素医学が、専門領域を拡張し、わくわくするようなサイエンスへと発展してゆくことを切望します。そしてこの若い科学を、私たちは反射的な感情に惑わされることなく、しっかりと自分の力で判断し、見極めてゆきたいものです。
【追記:2008.8.13, 2008.8.15】
このエントリーをご覧になった太田成男教授から「説明責任を果たすために研究室のWeb上にも今まで誤解を生じさせている事柄についての解説をのせなくてはならないと考えるようになっています。」「水素研究会(も)早急にHPを立ち上げようと思っています。」とのご連絡をいただきました。続けて太田教授から長文のお手紙をいただきました。このエントリーで私が書いたことについて、認識不足だった点に対する訂正と、そして水素水研究への理念が記されていました。わかりやすく、また心を動かされる内容で、私自身も水素研究への理解が進みました。
太田成男教授からいただいた文書は、そのままこちらのエントリーに掲載しました。
→「太田成男先生からの手紙」(2008.8.15)
ぜひ併せてお読みいただければ幸いです。
今回のエントリーがよいきっかけになれば私としても嬉しいです。これからの研究とウェブ展開に期待します。
